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2章

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「え?! ディアゴ、の彼女さんなんですか!!」
「彼も黒田グループの本社に勤めてましたから」
「・・・・・・ん、そうだったんだ」

 田淵に落胆の色はあまりない。
 その様子を黒田は黙って見続ける。

「それで、彼はそこの黒田さんが起業した会社に転勤したことで、事が拗れてしまったようなんです」

 「その発端は、私が理不尽な解雇にあったことがきっかけなんです。あの社長をぎゃふんと言わせないと気がすまなかったので、私は私の力で起業しようと考えていたのですが、暫くは私も怒りとか憎しみとか諸々の感情に流されちゃって。それを彼が見てたこともあって、同じ黒田グループから独立した黒田さんに協力を頼もうとしたみたいで、そちらの会社に転勤して」秘書の犬飼は続ける。

「そこまでは貴方に関与することはなかったんですが。彼、パソコン操作が苦手で、しかも配属された部署がデスクワークメインで、多少目立つことしなきゃ社長のところまでコンタクトとれないと思ったんでしょう。教室に通っていたらしいんです」
「あ、僕のところの」
「そうです。そこで、偶然意気投合して、友人になったと聞いてます。でも、その友人が困っていたら・・・・・・」
「——助けますよね、ディアゴ君なら」
「ええ、彼の美点はそこなんです。聞けば、ベロベロに酔った貴方を介抱しながら、永遠と貴方の恋人と一緒にいる時間が少なすぎて寂しい、という愚痴を聞かされていたようです」

 これ以上酒に呑まれた痴態を曝されるのかと思った。身を縮こまらせて、生唾を飲んだ。

「ここで行き違いが発生してるんです」
「行き違い?」
「田淵様は、一夜の過ちを犯したとお思いでしょう?」
「あ・・・・・・」

 ディアゴの交際相手に面と向かって肯定する度胸はなく、口元をまごつかせて肯定を示した。

「それは、ディアゴの所為です。すみませんでした」
「・・・・・・?」
「貴方は過ちを犯してなどいません。それどころか、浮ついてもいなかったのが、愚痴として証明されてます」

 犬飼はいう。「詳しく言いますと、ディアゴも酔っている中で貴方が泥酔して、嘔吐を繰り返しながら黒田さんへの寂しい愚痴を言っていたようで。その最中に眠ってしまわれてから、田淵様に連絡が入ってきたそうです。時間帯的に交際相手だろうと、思い込んで電話をとって少し要らぬ口を出してしまったようで・・・・・・その後ディアゴ自身も接触を図ろうとしていた黒田さん相手だと知って、引くには引けず貴方との関係性を曖昧にさせたままにしたらしいのです」。

「これが事の一端、です」
「つまり、ヒロキさんは泥酔して、ディアゴ宅で吐瀉物を撒き散らして、俺のことを想いながら寝ただけ、と」
「く、黒田君、その言い方・・・・・・」

 所々で犬飼に棘を刺す黒田を諌める。

「じゃあ、僕が服を着ていなかったのは、過ちを匂わせるため・・・・・・というか、ただ迷惑をかけてしまったんだ」
「そうですね。お互い様の部分はあるのでしょうが、人の彼氏をゲロまみれにしたことは、少しムカついてます」
「——おい、根本的に、ディアゴの操縦を怠ったそちらの非が原因でしょう。今更火を吹かっけるなんて、往生際が悪いですよ」
「・・・・・・っ」
「犬飼さん。それはこの年になっても飲み方を弁えなかった僕にも非があります。自棄を起こしていたとしても、迷惑はかけちゃいけませんからね」

 ベッドに腰を下ろしたまま頭を下げて謝罪をした。
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