82 / 104
2章
81——黒田——
しおりを挟む
そこへ、タイミング良く黒田のスマホに着信が入る。まさに助け舟だ。
「ちょっと仕事の電話みたいだから、ついでにパソコン持ってくるよ」と言い逃げるようにリビングから抜ける。
「もしもし、廣田? スゲー助かったよ」
「あ? そうか。で、調べてみたんだけど」
「ディアゴ・カルスコス・ジェーンって奴なら社員として在籍してる。ハーフなんかじゃなくて、純粋のノルウェー人。ここまではさっき連絡した通りだけどよ」カチカチと後がする。マウス操作をしながら話しているらしい。
「ソイツ、前の会社が黒田の本社勤めだったらしいんだよ。中途採用の面接は人事部に一切を任せているから、俺も知らなかった事実だったわ」
「・・・・・・やっぱりな。じゃあ、ヒロキさんの浮気は白に近いことになる――」
「え、なぜ?」
「日本人というか、黒田の上層部に近い役職かもしれないんだよ。明言を避ける言い回しが、まさに黒田の人間を象徴してる。そこに、廣田が黒田の人間だって確実な情報を入れてくれた。それも本社勤めとあれば、俺の予想は的中」
「ま、まぁそうだな。たしかに、社長があんなんだしな」
「で、中途採用で入ってくるってことは、また、間接的に刺客を送り込んできた可能性も十分に考えられる。だから、情が移った可能性を除いては――」
「ハニートラップならぬ・・・・・・いや、もうこれ以上の言葉は言えねぇや」
暫く沈黙を作った廣田が口を開く。「まぁ、妥当な時期だな。あのあとすぐに行動をとれば、内部の混乱をさらに招くことになるから、噂は70日の感覚で間を空けてきやがったんだろうな」。
「その意見に賛同だ」
「じゃあ、現行犯で証拠を掴めるように、見張りが必要になってくるな」
「そんなことはちょっと置いとくとして――」
「置いとくな!」
「ヒロキさんが黒だと思ってたし、ヒロキさん自身も黒だと信じて疑わなかったから、お互いヤッた、ていう認識でいてさ。その状態で出ていかれたら、本当の別れになると思って監禁したはいいけど・・・・・・この電話が来る前に・・・・・・ヒロキさんの会社に行ってさ、代わりに辞職願を出しちゃった」
「っ――はぁ?!」
「いやいや、監禁もやりそうだ、っていう軽いイメージはもってたけど、実際にやりやがったし、それより、仕事辞めさせたって!!」黒田の耳が痛くなるほど驚愕の声のボリュームが伝わる。
「勝手にやっちゃったし、さっき会社に急に休みを貰ったから、その詫びの連絡を入れたいって言われちゃって。困ってたところに、廣田が電話かけてくれて」
「ただの時間稼ぎじゃねぇか。で? 戻れそうなのか」
「・・・・・・席は空けとくって」
「じゃあ、問題ねぇ」
「・・・・・・」
「おい・・・・・・ほとぼり冷めればそれでいいかな、なんて馬鹿な考え、ないよな」
黒田は無言の肯定を示した。
「田淵君を直接見たことはねぇけどさ。ぶっとんではいるだろうが、おそらく、黒田よりは健常者に近い存在だぞ。社会に出たい、コミュニケーション取れるようになりたい、何より、そう思う行動原理がお前と肩を並べたい一心なら、尚更・・・・・・。これ以上溝を掘ってみろ。戻れるもんも戻れなくなるぞ。引き返せるうちに引き返せ」
(健常者って・・・・・・じゃあ、俺は一体何の病気を持ってるっていうんだ)
「でも、いつ、また、こんな状態になるか分かんないじゃないか」
廣田は社長という肩書きをもった黒田に、怒鳴りつけた。「だから!! 本質を見抜けと言ってるだろうが!! 何でそんな状況になったのか、その原因をよく考えろ!」。
言い逃げるように、通話を一方的に切られてしまった。
「ちょっと仕事の電話みたいだから、ついでにパソコン持ってくるよ」と言い逃げるようにリビングから抜ける。
「もしもし、廣田? スゲー助かったよ」
「あ? そうか。で、調べてみたんだけど」
「ディアゴ・カルスコス・ジェーンって奴なら社員として在籍してる。ハーフなんかじゃなくて、純粋のノルウェー人。ここまではさっき連絡した通りだけどよ」カチカチと後がする。マウス操作をしながら話しているらしい。
「ソイツ、前の会社が黒田の本社勤めだったらしいんだよ。中途採用の面接は人事部に一切を任せているから、俺も知らなかった事実だったわ」
「・・・・・・やっぱりな。じゃあ、ヒロキさんの浮気は白に近いことになる――」
「え、なぜ?」
「日本人というか、黒田の上層部に近い役職かもしれないんだよ。明言を避ける言い回しが、まさに黒田の人間を象徴してる。そこに、廣田が黒田の人間だって確実な情報を入れてくれた。それも本社勤めとあれば、俺の予想は的中」
「ま、まぁそうだな。たしかに、社長があんなんだしな」
「で、中途採用で入ってくるってことは、また、間接的に刺客を送り込んできた可能性も十分に考えられる。だから、情が移った可能性を除いては――」
「ハニートラップならぬ・・・・・・いや、もうこれ以上の言葉は言えねぇや」
暫く沈黙を作った廣田が口を開く。「まぁ、妥当な時期だな。あのあとすぐに行動をとれば、内部の混乱をさらに招くことになるから、噂は70日の感覚で間を空けてきやがったんだろうな」。
「その意見に賛同だ」
「じゃあ、現行犯で証拠を掴めるように、見張りが必要になってくるな」
「そんなことはちょっと置いとくとして――」
「置いとくな!」
「ヒロキさんが黒だと思ってたし、ヒロキさん自身も黒だと信じて疑わなかったから、お互いヤッた、ていう認識でいてさ。その状態で出ていかれたら、本当の別れになると思って監禁したはいいけど・・・・・・この電話が来る前に・・・・・・ヒロキさんの会社に行ってさ、代わりに辞職願を出しちゃった」
「っ――はぁ?!」
「いやいや、監禁もやりそうだ、っていう軽いイメージはもってたけど、実際にやりやがったし、それより、仕事辞めさせたって!!」黒田の耳が痛くなるほど驚愕の声のボリュームが伝わる。
「勝手にやっちゃったし、さっき会社に急に休みを貰ったから、その詫びの連絡を入れたいって言われちゃって。困ってたところに、廣田が電話かけてくれて」
「ただの時間稼ぎじゃねぇか。で? 戻れそうなのか」
「・・・・・・席は空けとくって」
「じゃあ、問題ねぇ」
「・・・・・・」
「おい・・・・・・ほとぼり冷めればそれでいいかな、なんて馬鹿な考え、ないよな」
黒田は無言の肯定を示した。
「田淵君を直接見たことはねぇけどさ。ぶっとんではいるだろうが、おそらく、黒田よりは健常者に近い存在だぞ。社会に出たい、コミュニケーション取れるようになりたい、何より、そう思う行動原理がお前と肩を並べたい一心なら、尚更・・・・・・。これ以上溝を掘ってみろ。戻れるもんも戻れなくなるぞ。引き返せるうちに引き返せ」
(健常者って・・・・・・じゃあ、俺は一体何の病気を持ってるっていうんだ)
「でも、いつ、また、こんな状態になるか分かんないじゃないか」
廣田は社長という肩書きをもった黒田に、怒鳴りつけた。「だから!! 本質を見抜けと言ってるだろうが!! 何でそんな状況になったのか、その原因をよく考えろ!」。
言い逃げるように、通話を一方的に切られてしまった。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説
割れて壊れたティーカップ
リコ井
BL
執着執事×気弱少年。
貴族の生まれの四男のローシャは体が弱く後継者からも外れていた。そのため家族から浮いた存在でひとりぼっちだった。そんなローシャを幼い頃から面倒見てくれている執事アルベルトのことをローシャは好きだった。アルベルトもローシャが好きだったがその感情はローシャが思う以上のものだった。ある日、執事たちが裏切り謀反を起こした。アルベルトも共謀者だという。
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
逃げられない檻のなかで
舞尾
BL
都会で銀行員として働いていた高取遥は、大損失を出した上司の身代わりにされ、ある田舎へと左遷されてしまう。そこで出会ったのは同年代の警察官、高取正人だった。
駐在所の警察官として働いていた正人と遥は次第に仲良くなっていくが、ある日遥に連絡が来て…
駐在所の警察官×左遷されたサラリーマンの話です。
攻に外堀をガンガンと埋められていきます。
受に女性経験がある表現があります。苦手な方はご注意ください。
※はR指定部分です。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる