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1章
60——黒田裕子——
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二人の息子を持つ裕子は、五十路を越しても綺麗さを保ち旦那に愛される日々を送っている。元旦那を簡単に捨てた罪が、しっかりと贖えているだろうか、時折不安に駆られる。
――飛露喜に色濃く血筋が見えるのは、その見本を見せた裕子自身の所為である。それを遺伝的でさも致し方ないと捉えていた裕子にとって、元旦那の自殺でようやく己の愚行に気付かされたのだ。
今日で12回目の元旦那からの忌み嫌らわれる日が来る。
仏壇前に正座をしてとある雑誌を供物として献上した。
共に正座して裕子の方を抱く。
「ビジネス雑誌のね、新進気鋭のベンチャー企業特集にうちの子、載ってたわよ。黒田に茶々入れられたりしてるようだけど、どうにか黒田の血をみせながら・・・・・・でも、黒田とはまた違う順序で歩んでいるわ」
「ああ、僕の息子と一緒に頑張っているようで安心していますよ」
「あの子、結局黒田の子会社社長の廣田君を抱き込んで、優良企業を目指しているんですって! 実力社会の世の中、残業をしないよう徹底、福利厚生の充実を兼ねた廣田君のやり方に賛同したらしいわ。実に、黒田らしくない子会社もあったものだわ。貴方、知ってた? 黒田の中にこれだけ人情深い人もいたのよ」
「いえ、知ろうとしなかったのは私よ」遺影に視線を送り続ける。
「実際、貴方の声を聞くことなく、家を出て、再婚して、子どもを再びもったけど、上手く行かないことだらけで。へそ曲げて意地悪を言ってしまう始末よ。――それでも、私の二人の子どもたちが、今立派に生きてるなら、それこそ貴方に報われるというものでしょう?」
「さぁさ、二人で晩酌しようじゃないか。肴はもちろん」旦那は微笑んだ。
「ええ。もう一冊買った方の雑誌を一緒に読みましょう」
――第1部 完――
――飛露喜に色濃く血筋が見えるのは、その見本を見せた裕子自身の所為である。それを遺伝的でさも致し方ないと捉えていた裕子にとって、元旦那の自殺でようやく己の愚行に気付かされたのだ。
今日で12回目の元旦那からの忌み嫌らわれる日が来る。
仏壇前に正座をしてとある雑誌を供物として献上した。
共に正座して裕子の方を抱く。
「ビジネス雑誌のね、新進気鋭のベンチャー企業特集にうちの子、載ってたわよ。黒田に茶々入れられたりしてるようだけど、どうにか黒田の血をみせながら・・・・・・でも、黒田とはまた違う順序で歩んでいるわ」
「ああ、僕の息子と一緒に頑張っているようで安心していますよ」
「あの子、結局黒田の子会社社長の廣田君を抱き込んで、優良企業を目指しているんですって! 実力社会の世の中、残業をしないよう徹底、福利厚生の充実を兼ねた廣田君のやり方に賛同したらしいわ。実に、黒田らしくない子会社もあったものだわ。貴方、知ってた? 黒田の中にこれだけ人情深い人もいたのよ」
「いえ、知ろうとしなかったのは私よ」遺影に視線を送り続ける。
「実際、貴方の声を聞くことなく、家を出て、再婚して、子どもを再びもったけど、上手く行かないことだらけで。へそ曲げて意地悪を言ってしまう始末よ。――それでも、私の二人の子どもたちが、今立派に生きてるなら、それこそ貴方に報われるというものでしょう?」
「さぁさ、二人で晩酌しようじゃないか。肴はもちろん」旦那は微笑んだ。
「ええ。もう一冊買った方の雑誌を一緒に読みましょう」
――第1部 完――
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