アヤ取り

2

　筋の通った返事が返ってきて、聡明な鴬に男の部分が臨界点に達しそうになる。
　ソファから立ち上がり、キッチンへと向かう途中に鴬の横を通り過ぎる。

　「っていうのは、建前で……」鴬が仁作の後を追い、スラックスの中に入れられた腰元のシャツを掴んだ。

「男らしくて、皆のために体を張る仁作は皆の憧れの的だと思うよ。でも……ずっとそばにいてくれるって約束したのは僕だから……僕だけに全てを向けて欲しかった」

　そして、掴まれたシャツに、より克明にシワを作って「子どもとしか見てくれなくても、ずっと好きを抱えてここまで来たよ」と訴えかける。

　仁作は生唾を飲み込むのも忘れて、刹那——リビドー的に唇をあてがった。

　間髪入れない所作に目を見開いたままの鴬。しかし、寛容的に仁作の背中に腕を回した適応の早さに、突発的に襲った仁作が驚く。
　それでも鴬の口内へねじ込まれた舌は、欲動的に快感だけを求め動いて歯列へ、奥へ、それから上顎へと粘膜を混ぜ合いながら刺激を与える。

　「もっと……」と鴬が強請る。そう言いながら絡んだ音さえ、聴覚刺激となって耳を犯していく。

　それがエスカレートして徐々に仁作が上から覆い被さり、次第に腰を抜かす鴬。ゆっくりと雪崩れるように床に膝をつき、受け入れ続ける。

　止まらない。いや、止まれない。積年溜め込んだものだ、一度放流すればとめどないことなど百も承知だった。鴬の制服を剥ぎ取るかの如く、脱がせては投げて、次へと脱がしにかかる。

　露出させた肌が扇情的で、さらに白さも相まった女性的な徒あだっぽさに、欠片ほどの自制心が朽ちていく。

　本能剥き出しの仁作が息を荒くしながら、首にかぶりついて、鎖骨に噛み付いて、小粒の突起をねぶった。蛇舌のように伸ばした舌で突起に巻きつかせながら舐めとる。
　そこが「甘い」など、おとぎ話の中の小洒落た表現だと実は奥底で馬鹿にしていた。だが、これは目の前の視界に、艶かしいはだけた鴬の姿があり、味などするわけがないのに、甘い蜜がそこから滴り落ちても不思議ないと錯覚してしまう。

　鴬の嬌声を聞いて尚、女性らしく感じて思わず舌舐めずりが出た。

　「仁作……仁作、ねぇ——」腕を回して仁作の襟首を掻き毟むしる。ここまでの一連に仁作が一言も言葉を紡がずに来ているので、流石に不安を覚えたのだろう。

「——っ、ごめん！！」