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1章
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しおりを挟む家に帰宅して、即座に手を洗い、シャツの腕をまくると、早速冷蔵庫から鶏もも肉を取り出す。一口サイズに切って味付けをする。一条のこだわりは、市販の粉末を使わずに多彩な調味料を揃えてあるものでオリジナルを作ることだ。
油を温めあとは揚げるだけの工程まで終わったところで、インターホンが鳴る。大方柳瀬であることに間違いではないのだが、鍵が開いているからと連絡を入れても、一条が玄関を開け招き入れないとあがってこない。人様宅に勝手に上がり込むことに抵抗がある不良は、果たして不良と言えるのか、疑念を抱きつつ玄関ドアを開ける。
「ちゃんと来たね」
「・・・・・・飯をタカりに来たんだ」
「いいよいいよ、おいで。あと揚げるだけだから、座って待ってて」
一条は柳瀬をリビングに誘導して腰を下ろしてもらう。そこで、タイムスケジュール的にこのまま風呂に入ってもらうほうが効率的だと考えた。
「柳瀬、揚げてる間にお風呂に入っちゃいなよ。どうせ明日土曜で休みなんだし、早めにすべて済ませておきたいでしょ」
寝間着も用意してあるから、と付け足せば、大人しく脱衣所へ向かった。これで、明日の朝までは一緒に居られると確約された時間の確保に成功する。
しかし、念には念を押して、揚げ終わった唐揚げと味噌汁、それから市販のサラダを卓上に並べ、再びキッチンで明日の朝食の準備に取り掛かる。
「風呂、サンキュ」
「あ、サッパリした?」
(――いつも思うけど、僕のパジャマ着る柳瀬。最高・・・・・・)
スウェットを着てもらっているが、手足の余裕がないのが一条にはツボで、1人目頭を押さえて悶えた。
「よし、冷めちゃわないうちに食べよう!」
黙ったままの柳瀬は、素直に席につく。友人を招いて食卓を囲むことを夢見て、4人がけのテーブルを奮発して良かったとつくづく感じた。
向き合った2人は夕飯にありつく。
匂いで食欲をそそられたのか、柳瀬の顔つきが変わる。しっかりと白米のつがれた茶碗を右手に、箸で肉を掴んで噛めば香ばしく旨い音を奏でる。
「んぅまい」
「そ? 良かった。大量に作ってあるからおかわり自由」
「絶対する」
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