心、買います

ゴンザレス

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1章

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「・・・・・・へぇ、柳瀬、ご機嫌斜めなんだ?」
「・・・・・・」
「榊君、かな? 柳瀬のそれ、多分、僕のせいなんだ。だから、僕らで解決させてほしいな」
「それは構いませんが、柳瀬、どうする?」

 肩を抱いた腕を解いて、柳瀬の意のあるところに任せる。
 一条は歯噛みして、突っ走りたい気持ちを抑えた。

「別に・・・・・・一条が原因じゃねぇし、てか、不機嫌でもねぇ」
「いやいや、どう考えても一日中不機嫌だったじゃん。6時間目の授業なんて酷かったよ? いつも話聞いてないけど、さっきのは邪魔してたもん」

 榊のいう6時間目の授業は、教師が「カースト制度」について数々の功績を駄弁していたのだ。

「俺らだって1年だけど過酷で残酷な状況を見てきたのに、またその恐怖を再燃させようとあちこちで吹聴して回ってるみたいでさ。会長さん気をつけたほうがいいよ」
「ああ、情報ありがとう」

(雑務が増えるから、そりゃ、1人や2人カースト制度賛成派が残っていてもおかしくはないけど)

「とくに、現国担当の四月一日。今年から俺らの担当教科で、会長さんもよくアイツの授業風景しらんやろうから教えてあげるけど、相当よ? だから、柳瀬が授業に茶々入れてたから、さっきまで職員室に呼び出し食らって――」
「おい、榊。行くぞ」

 言葉を遮り、一条を置いて教室を出ていく。

「柳瀬!」

 振り返り柳瀬の腕を掴む。

「榊君と寄り道してもいいから、ご飯はうちにおいで。絶対、おいで」
「・・・・・・唐揚げ、食いたい」
「了解、絶対来てよ」

 一条が柳瀬の背を見届けると、少し照れた様子で顔をそらす。いつもこう素直であれば――否、ツンデレという属性である柳瀬に10割をデレに極振りして想像してみると、うん、何やら気色悪い。
 後ろをついていく榊が柳瀬の支えとなっている構図が目の前にある。すぐにでも断ち切ってやりたい、そう感じていれば「一条、会長。さっき、柳瀬・・・・・・という奴と何の話、を」振り向くと顔面蒼白した立野が一条の前に立っていた。

「柳瀬は友達で何でもない話してたよ。よくあるでしょ、品行方正そうに見えるのに、あの生徒会長は実はワルだった! てやつ」
「ありがちですね。でも・・・・・・一条会長が不良とつるんでよからぬことを企んでるというわけでもなさそうですね」
「はは、もしかして一般生徒からの信頼性を損ねないよう考えてくれたの?」
「あの、えと、そういうわけ――ですね」
 
 一条は何やら上機嫌に、立野の質問をのらりくらりと方向転換して躱している。
 
「まぁ、もちろん、会長が愚行をするとは思えませんが、柳瀬が不良であることには相違なさそうですね。会長がどれだけ親しくしていようと、周りからはイメージダウンにしかなりません。でも、生徒会長が実はワルだった、とはなりにくいです。だって、一条会長は昔から・・・・・・」
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