上 下
363 / 368
最終話:これからの事。

09これからの事。

しおりを挟む


「それにしてもへんてこな面子だよなァ~。元々は戦い合ってた奴らだぜ?それがこうやって集まって?祝言を祝うなんざ、笑えるな」


白狼がそれぞれの顔をじっくりと見ながら見渡した。

七名の人間を集めた事の発端ほったんである章に、彼と目的を同じくしていた幸生と紅葉。

章に呼び出された十二天将の青龍。

そして章の弟であり、封印をこうとしていた春秋、それに従っていた白狼に鞍馬くらま

そして、紗紀が使役しえきした妖怪。

化け狸の兄弟に、七曲、雪音に九重。

彼女のパートナーであるミタマに、ミタマの妹ウカノ、そして二人の上に立つ神、ウカノミタマ。

紗紀と同じく七名のメンバーの灯に楓。

魂は違うけれど、優一に、それぞれのパートナーであるキシマ、神鳩かみばと、こんぴらさん。

さらに、紗紀の呼び出した朱雀すざくに、封印からかれた今鏡いまかがみ

それはなんて不思議なメンバーだろう。


「神々も紗紀さんにはとても感謝していますからね。神に妖、そして人が交わるこの空間はとても不可思議で、まるでおとぎ話のようですね」


春秋は今までの出来事を振り返るように目を閉じた。


「お主らも、使役しえきされているわけでもないのによくここで小間使いをやれるな。残る以外にも選択肢はあったはずだろうに」


今鏡が理解しがたいと言いたげに九重や七曲に視線を向ける。

彼らは顔を見合わせると、七曲は笑って、九重は目を伏せた。


「ボクはここが気に入ってるからね~。ずっと賑やかだったから離れがたくなっちゃった」

「人間の寿命は短いからな。退屈しのぎに残ったまでだ」


そう、妖怪である彼らにとって人間である紗紀と過ごす時間は人生の中でほんの瞬き程度の物だ。

だからこそ、離れがたくあったのだろう。


「皆様、新郎、新婦共に準備が整いました。それぞれお並びください」


ミタマの妹、ウカノが涼やかな声でそう告げ、丁寧に頭を下げた。

その声かけに、列を整えて正座をする。


 ◇◆◇


廊下で顔を合わせたミタマは瞬きを忘れたかのように呆けて白無垢を身にまとった紗紀を見つめた。


「……ミタマさん?」

「え。……あ、ああ」


 ミタマが言葉に詰まって、瞳をまんまるくして見つめるものだから、紗紀は思わず笑ってしまう。

その笑顔にはどこか照れが混じっていた。


「これは……夢じゃ、ないんだよね?……ちょっと頬をつまんでもらってもいいいかい?」

「ふふっ。何言ってるんですか。それ、以前サグジさんと出会ったばかりの時に私が言ったセリフと似てますよ。サグジさんは駄目だって怒ったじゃないですか」


クスクスと口元にこぶしえて笑う彼女に見惚れてしまう。

もう何年も側に居て、見飽きたっておかしくないはずなのに。


「そりゃあ、怒るよ。キミの頬に赤い痣でも出来たら大変だ。でも、キミは俺の話一切聞き入れてくれなかったけど」

「あはは。そうでしたね」


本当に良く笑う彼女に、ミタマはどこか心が満たされた。


「……綺麗だよ、紗紀。とても」

「……あ、ありがとうございます。サグジさんも、普段と違いますね。素敵です」


照れくさそうに言葉を口にする紗紀に、ミタマは衝動的に手を伸ばしかけた。


「さぁさ、おたわむれはそこまでになさって?皆様お待ちかねですよ」


間にウカノが入ってきて、にこやかに茶化ちゃかす。

なんだか急に気恥ずかしくなって、二人して顔を赤らめたままはにかんだ。


こうして祝言は粛々しゅくしゅくり行われ、夜はうたげで大騒ぎとなった。
 

 ◇◆◇


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

くろぼし少年スポーツ団

紅葉
ライト文芸
甲子園で選抜高校野球を観戦した幸太は、自分も野球を始めることを決意する。勉強もスポーツも平凡な幸太は、甲子園を夢に見、かつて全国制覇を成したことで有名な地域の少年野球クラブに入る、幸太のチームメイトは親も子も個性的で……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

もしもしお時間いいですか?

ベアりんぐ
ライト文芸
 日常の中に漠然とした不安を抱えていた中学1年の智樹は、誰か知らない人との繋がりを求めて、深夜に知らない番号へと電話をしていた……そんな中、繋がった同い年の少女ハルと毎日通話をしていると、ハルがある提案をした……。  2人の繋がりの中にある感情を、1人の視点から紡いでいく物語の果てに、一体彼らは何をみるのか。彼らの想いはどこへ向かっていくのか。彼の数年間を、見えないレールに乗せて——。 ※こちらカクヨム、小説家になろう、Nola、PageMekuでも掲載しています。

QA高校ラジオの一刻

upruru
ライト文芸
初めまして。upruruです。初めての小説投稿です。ジャンルは、コメディです。異世界に飛ばされてバトルを繰り広げる事も無ければ、主人公が理由もなく何故か最強キャラという事もありません。登場人物は、ちょっと個性的というだけの普通の人間です。そんな人達が繰り広げる戯れを、友人集団を観察している感覚でお付き合いして頂ければ幸いです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...