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最終話:これからの事。
06これからの事。
しおりを挟むそれから、五年の月日が経った。
「紗紀ちゃーん!来たよ~!」
手を振ってキャリーケースを転がす灯と、その後ろには背丈がぐんと伸びた楓が居た。
二人の薬指にシルバーの指輪がはめられている。
少し前に婚約をしたのだと通話で報告があった。
「久しぶりだね!灯さんも元気そうで良かった~!来てくれてありがとう」
両手を広げて二人はぎゅうぎゅうに抱きしめ合う。
そして、次に楓へと視線を向けた。
「身長すっごく伸びたね!」
「何、前はチビだったって?」
鋭い目つきで睨まれて、ヒヤリと背筋が寒くなった。
「ははっ!冗談だよ。やっと灯の身長抜いてさ。就職も決まったし」
「婚約したし?」
灯がニヤニヤと笑えば、楓はどこか照れくさそうにそっぽを向く。
「本当にお二人共おめでとう!指輪綺麗」
「ありがとう。そして、そっちこそ。結婚おめでとう!むしろ今回の宿泊は紗紀ちゃんの結婚式がメインなんだからね~!しかも昔馴染みで貸し切りなんでしょ?」
「うん。美味しい料理食べて、楽しんでもらえたら嬉しいな」
紗紀もどこか照れくさそうに笑った。
「あのミタマさんが良く五年も我慢したよね。すぐすぐにでも結婚する気満々だったのにさ~」
「あはは。ここがしっかり起動に乗ってからがいいってワガママ聞いてくれたんだ」
「やだもう!愛されてる~!」
照れる紗紀をもう一度抱きしめる灯。
ずっと敬語を使っていた紗紀も、灯に何度も指摘されて慣れた事もあり、今では親しく話を出来るようになった。
楓もまた、無口だったのによく笑うようになり、冗談まで言える仲になった。
三人で居る時間は昔よりも温かくて穏やかだと思う。
「紗紀お姉ちゃん!早く身支度整えるよ!時間押してるんだから!……あ、二人共いらっしゃい!」
マミが玄関まで呼びに来ると、灯と楓の姿を見て顔をほころばせた。
「お兄ちゃーん!カイリー!客間に案内してー!」
マミがそう叫べば、バタバタとこちらに集まって来る化け狸一同。
「うわー。やっぱ子供の成長って恐るべしだね。こんなに大きくなるなんて」
灯が唖然とした声をあげる。
「ついにムジナくんに抜かされたの」
紗紀が少し寂しそうにそう話した。
紗紀の隣に立って自慢気に胸を張る次男のムジナ。
「待って待って。ユウリくん、あたしと身長変わらないでしょ……」
戸惑う灯が、靴を脱いで上がるとユウリの隣に立つ。
「若干ユウリの方が高い」
キッパリと答える楓。
灯が悔しそうに声をあげる。
「カイリなんて私と同じ身長なんだよ!?」
もうすぐ抜かれちゃう!とマミは自分の尻尾を前に持って来て怯えた表情をした。
「やっぱ男なら、楓兄ちゃんくらい背丈欲しーよな!」
ムジナが羨ましそうに楓を見る。
それにユウリも頷いた。
「正直、朱雀や青龍くらいの身長すごく憧れる。七曲はデカすぎ」
楓も本音を漏らせば、あー……。とみんな視線を逸した。
「高望みなのは分かってるよ!」と楓は声を荒げる。
「ってこんな話してる場合じゃないよ!!ほら、紗紀お姉ちゃん行こう!」
「紗紀ちゃんまた後でねー!」
みんなに手を振りながら、マミに手を引かれて紗紀は歩き出す。
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