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第二十話:最終決戦。
38最終決戦。
しおりを挟む袖に手を入れて、二本の注射器を取り出す。
(良かった、割れてない)
「あります!」
「使わせておくれ!」
「……投げてもいいですか?」
「構わん!」
雪音の返事に、紗紀はそっと注射器を手から離した。
雪音はそれをなんなくキャッチすると、森へと視線を向ける。
森から姿を見せたのは雪音が凍らせたはずの鬼の女の子、紅葉だった。
彼女の身体は半分以上が真っ黒に染まっていて、たくさんの腕と足が生えている。
「紅葉さん!?」
あまりに変わってしまった彼女の姿に、紗紀は愕然とした。
紗紀の声は紅葉には届かない。
「随分侵食されちゃってるねぇ~」
七曲がこわごわと相手を見やった。
自分が薬を口にした時の姿と重なって、なんとも言えない気分になる。
「こちらは任せておれ!」
「……っ、お願いします!」
紗紀には雪音達に紅葉を託すことしか出来ない。
「もし、余力があれば反対側で朱雀さん達が救助をしてます!」
「はーい!まっかせて~!」
七曲が元気に手を振ってくれた。
「紗紀!」
ミタマに名前を呼ばれて、彼の視線の先へと目を向ける。
そこには跪いて弱っている春秋の姿と、立ちはだかる章の姿があった。
「春秋さん!」
大天狗とすら渡り合っていた彼が、まさか章に敗れるとは思いもしなかった。
顔色も悪く、浅い呼吸を繰り返している。
(やっぱり具合が悪いんだ……)
以前の戦闘後も、どこか苦しそうにしていたのを思い出す。
そんな彼に、章は手をかざした。
「变化!舞え、乱れ吹雪!」
紗紀が章に向けて攻撃を放つ。
「滅」
振り返った章はその攻撃を消滅させた。
「フハハハハ!!もう、誰も、止められまい。我が身に力を宿せ、十二天将が一人、騰蛇!!」
「!?」
(十二天将……!?)
空には雲ひとつ無いはずなのに、まるで雷が落ちるような光が章の身体を貫く。
あまりに眩しい光に、紗紀もミタマも視界が真っ白になって見えなくなった。
バチバチと電流が章の身体を巡る。
紗紀とミタマの視力が戻る頃には、章の身体は蛇の鱗に覆われて、足は蛇のように変貌し、その背には竜のような真っ黒い翼を生やしていた。
髪も爪も長く伸び切っている。
震えそうになる紗紀の手を、ミタマは掴んだ。
紗紀は我にかえると、ミタマの手を握り返す。
すると、パキリと薬指にはめられていた指輪が割れた。
「え」
ミタマと二人でその手を見やる。
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