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第二十話:最終決戦。

32最終決戦。

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朱雀は洋館内に入ると気配が無いか確認する。

薄暗い館内はとても静かだった。

誰も居ないのを確認し終えると、朱雀は洋館を燃やした。

綺麗な洋館を跡形もなく灰へと変え、しっかりと火を鎮火ちんかさせる。

辺り一面には焦げ臭さが漂った。


「これが終われば、私達はどうなるのだろうな」


見上げる月に飲み込まれてしまいそうだ。
 
朱雀は元の鳥の姿へ戻ると、その場を立つ。

向かう先は方舟はこぶねだ。


 ◇◆◇


その少し前の時刻。

炎が燃え仕切る館の直ぐ近くで凍らされていた紅葉は、じわじわとゆるやかに溶かされていく。

目の前で燃やされる館を見ている事しか出来なくて、灰になってしまった頃ようやく身動きが取れるようになった。

炭としてすら残らなかった。

一切を残さずに燃やし尽くされた館。

どうして我慢ができようか。


「うわぁあああああああああ!!」


泣き叫ぶ紅葉。

章とずっと過ごしていた洋館が、こんな無残な形にされて、正常ではいられない。

ブクブクと体内の怪物がうごめく。


「……許さナイ……」


空を飛行する真っ赤で大きな鳥が見えた。

それは満月へと向かっている。

地面をうようにして、紅葉も満月の方角へと向かった。


 ◇◆◇


紗紀とミタマが船内へ戻ろうとドアノブに手を伸ばした時だった。

目の前のドアがゆっくりと開く。

そこから現れたのは政府の男、章だった。

瞬時にミタマはドアの前に立っていた紗紀の腕を掴み、後方に引く。

章と紗紀の間に立ちはだかるように立った。


「ミタマじゃないか。元気そうだな」

「やぁ、キミこそ。色々としてくれたね」


お互いが笑顔で対峙しているが、空気はピリピリと肌を刺す。


「紗紀くん、まさかと思うが、約束を違えるつもりでは無いだろうな?」


念を押すように、鋭い眼差しを紗紀へと向ける章。


「私は、章さんとは一緒にはなれません」


紗紀はミタマの横に立つと、強くそう発言をした。

章の表情がこわばる。


「……そうか。ならば、死んでもらうしかあるまい」

「ッ!」


ミタマが紗紀を抱き寄せて、後方へと跳躍をした。

間合いを取り、相手の出方をうかがう。


「章さん、章さんがしようとしてる事は、正しいのかもしれません」

「紗紀?」


ミタマも章も彼女の言葉に驚いたように目を見開いた。


「一人ひとり関わっていくのは時間も膨大に必要ですし、難しいと私も思います。一から始めた方が早いのも……理解、しています。でも……方舟に残るメンバーは私の存在を納得していません。章さんご自身も気づいていますよね?」


紗紀がうながすその先の事態が何を示唆するのか、章には痛いほど良く分かる。既に内乱が起きていた事も。

章と幸生の一致しない目的。

そこには未だに深い溝があり、お互い何度話し合っても解決にいたっていない。

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