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第二十話:最終決戦。
29最終決戦。
しおりを挟む青龍と対峙する朱雀、今鏡側は、我を失った青龍の自分の身も顧みない戦闘の仕方に手を焼いていた。
「だからいっそ殺せと言ったのだ!」
苛立ちを顕にする今鏡に、朱雀も負けじと声を張り上げる。
「うるさいぞ!……向こうだってへばってきているだろうが」
昔の仲間だと思うと、どうにも加減が難しい。
けれど、向こうは全力以上に怪我を負うことすら気にもしない。
「攻撃が来るぞ!小童!」
「うるせぇ!クソ爺!!」
売り言葉に買い言葉を繰り広げながら、青龍の放った攻撃を躱す。
「巻き立て烈火!」
「吹き荒れろ!烈風!!」
朱雀が放った炎が、青龍の周りをぐるぐると渦巻くように燃える。
それを今鏡の風で煽り威力を強めた。
朱雀は心が痛んだ。
「降らせよ、慈雨」
「しまった!……逃げろ!!」
朱雀が青ざめて叫ぶ。
けれども間に合わず、青龍の居る場所から半径五メートル内にバケツを引っくり返したような土砂降りの雨が降り落ちた。
「チッ!服がびしょ濡れじゃ……。小童……?朱雀!!」
今鏡は濡れた髪を掻き上げると、朱雀へと視線を向ける。
朱雀は地面に倒れ込んでいた。
苦しそうにガクガクと震えている。
息も浅い。
「我に従え、水流」
青龍がかざした手のひらから、渦を巻いた水が朱雀へと放たれた。
すかさず大天狗が朱雀の前へと立ちはだかり、金剛杖を両手で構える。
「吹き荒れろ!烈風!!」
金剛杖をクルクルと回し、渦を巻いた風で青龍の攻撃を弾いた。
「我に従え、水流」
尚も青龍の攻撃は続く。
びしょ濡れの身体はどうにも動きづらい。
手元が狂い、金剛杖を落としてしまった。
「……ッ!?」
青龍の攻撃をまともにくらい、今鏡は後方へと吹き飛ばされた。
地面に横たわったままの朱雀の呼吸は徐々に小さくなっていく。
炎の象徴である彼にとって、青龍の水の攻撃は効果てきめんだった。
ザクザクと草を踏み、青龍が朱雀へと歩みを寄せる。
「……青、龍……」
朱雀の頭に触れた青龍の手が、ガクガクと震え始めた。
「……逃げて、ください」
朱雀の耳に届いた言葉は、良く見知った彼のモノだ。
「……殺したく、ない……」
「……ッ、誰か……、誰か!縄を……!!」
朱雀が声の限りに叫ぶ。
戻って来た今鏡が青龍を蹴り飛ばした。
「馬鹿言え!こんな所に縄など……!!」
飛ばされた青龍は近くの木に背中を打ち付ける。
「ハイ、縄」
「は?縄!?……ほんに、縄じゃ」
突然手渡された縄に、今鏡はそれを握りしめてマジマジと見つめた。
差し出した人物を見れば、塗壁の七曲だった。
「ほら、動きが鈍ってる今だよ!行って行って!」
「ワシをこき使う気か!?……まぁ、良い。でかした小童!」
「わーい!後でたくさん褒めてくれない?」
「撫で回してやろう」
今鏡はふらつく青龍の首に手刀を落とすと、倒れ込んだ彼を縄で縛り上げた。
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