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第二十話:最終決戦。
21最終決戦。
しおりを挟む章は紗紀が居るであろう、部屋にたどり着いていた。
コンコン、とノックをするが応答は無い。
深い溜息を吐き出しながら重いその扉を開けた。
大きな満月に照らされて、瞳に映ったのは鳶色の翼を広げて窓から飛んでゆく紗紀の姿だった。
仲睦まじく、真っ白い男と抱きしめ合って。
章は扉を激しく叩いた。窓ガラスを割り、穴の開いたベッドに術で火を放つ。
「約束を違えた罪は重いぞ、紗紀」
憎しみの宿る瞳に、ベッドを燃やす炎がゆらゆらと揺れ映っていた。
章は今一度紗紀達の向かった方角へと視線を向ける。
その先にあるのは、方舟だ。
章は顔を歪めて笑った。
「フハハハハッ!図りおったか……。そう簡単に身を引くわけがない、か。ならば殺し合うまで」
腕時計を操作して、フッとその場から姿を消した。
◇◆◇
「紗紀、重たいだろう?降りよう?」
紗紀を抱きしめたまま、紗紀の翼を頼りに空を飛行する。
自分が紗紀の重しになっているように感じて、ミタマはなんとも言い難い気持ちになった。
「下は森ですよ?降りたら方舟まで随分走らなきゃですし。今は力を温存しておいてください」
紗紀の言い分はもっともだ。
分かっているけれど、たまらなく惨めに思う。
「……キミの意思は揺らがないと見た。变化」
「え?」
ぼふん、と音を立ててミタマが狐の姿へと形を変えた。
「もふもふ!!」
ギュッと逆に抱きしめられて、これはこれでも良いような気持ちになるミタマ。
惨めだった気持ちはどこへやら、姿が違うだけでこんなにも気持ちが変わるとは思いもしなかった。
「これならば軽いかと思ってね」
「軽いです!あ、いえ!普段のミタマさんが重いとかそういうわけでは……!」
あわあわする紗紀にミタマは思わず笑ってしまった。
「ふふっ。いいや。普通に考えて重くないはずが無いんだよ。キミへの負担が少しでも減るならそれでいい」
「お気遣いありがとうございます。ミタマさんと一緒に空でこの大きな月を見たかったんです」
ミタマに見せたいと思っていたあの夜空をこんな形でだけれど、一緒に見ることが出来て紗紀自身はとても満足していた。
「……綺麗だ」
「ですよね!……この世界を壊さない為にも、なんとかしなきゃですね」
「ああ。必ず」
二人の意志がより強固な物となった。
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