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第二十話:最終決戦。

17最終決戦。

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「……で、これを、どうしろと……」


楓がたどり着いた場所には大きな木が一本立っていて、その下には全裸の人々が数人横たえられていた。

思わず頭を抱える。


「とりあえず、敵が来ないかの見張り、か……。カーテン届いたら包めばいいだろ」


なぜかこんな時に限って、置いてきた灯の事を思い出した。

灯が居てくれたら、女性陣を丸投げ出来たのに、と。

遠くの大きな丸い月を見上げて、呆然とする。大きな溜息しか出ない。


(だいたい、脱がせたヤツ誰だよ!変態じゃねーか!!)


怒りで叫びたいのを心の中で我慢する。

見つけたら絶対一発殴ってやると固く決心した楓だった。


「しっかし、さっきからうるさいな……」


近くでは攻防が繰り返されているのか、怒号が鳴り響いている。

地面が揺れて伝わって来るほどに大きな攻撃が繰り広げられているようだ。

恐らく、朱雀達だろう。


「ちょっと、もう少し静かにしてくれないかな」


(ここで目が覚めでもしたら、俺が変態扱いされるだろ!)


ふざけるなと言いたい。

腕組をして、楓はその場で待つことしか出来ない。

自分がカーテンを取りに行っても良かったが、神鳩を残すと目覚めた人間達が怯える危険性を危惧し、渋々残る方を選択したのだ。

手持ち無沙汰にしていると、不意に背を預けていた木が揺れた。

何かの衝突した衝撃が、触れていた背中から伝わる。


「な、んだ……?」


瞬時に距離を取り、衝撃が加えられた方角へと視線を向けた。

その先には見覚えのある真っ黒な怪物が今まで見たこと無い程の大きさにまで膨れ上がっており、そこから伸びた腕が木を貫通していた。


「……ッ!……マジかよ。冗談じゃない……」


ひやりと冷え切った汗が背筋を滑り落ちる。

じっとりとして嫌な感触だ。


(俺の力だけでなんとかなるか……?しかも、守りながら)


ゴクリと喉が鳴った。

月明かりに照らされて、もぞもぞと動いた怪物の姿がゆっくりと視界に映る。

その姿を見て、楓の瞳が大きく見開かれていく。


(こ、いつ……。知ってる。見覚えがある)


ドクドクと鼓動がけたたましく騒いだ。

楓の瞳に映っていたのはセーラー服を来た少女だった。

体も顔も真っ黒に変色していてぱっと見では判断出来かねない。

けれど、そのセーラー服だけは始めに政府に呼び出されて集まった部屋で見かけた物そのままだ。


「ハハッ。……なるほどな」


(使えないと思ったらこんな風に切り捨てるつもりだったんだな……)


握った拳にギリギリと力が入る。

脳裏のりに浮かぶのは怪物にされた灯の姿だった。

腹立たしさが一気にこみ上げる。

伸びてきた腕をかわすも、近くには大勢の人が転がっている。


(どうする?……どう戦えばいい?)


「吹き荒れろ、風神」


次々に伸びて来る腕に暴風をぶつける。

けれど、風が止んでしまえば、また直様腕が伸びてきた。

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