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第二十話:最終決戦。

16最終決戦。

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「フッアハハハハハ!!……はぁ、殺してやるわ。章様の邪魔になるものはみんな!!……ッ!」


ドクンと鼓動が高鳴った。

ぐらぐらと視界が揺れる。

呼吸が苦しくて、喉を両手で掴む紅葉。


「アンタ、まさか……!」


雪音は嫌な予感がしていた。

この苦しみ方には見覚えが合った。

ボコッと紅葉の体から真っ黒い腕が生える。

それを見て雪音はやはりと確証した。


「例の薬を飲みおったか……」


ヒヤリと冷や汗が頬を伝う。

一対一でも厳しい状況なのに、殺さずになんとかするなんて出来るだろうか。

雪音の脳裏のうりに紗紀の顔がちらつく。


「グァアアアアアアア!!」


頭を抱えて苦しむ紅葉の体から、黒い腕が雪音へと伸びた。

雪音は横に跳んで避けるが、腕がそのまま雪音の跳んだ方へとグンッと動いた。

そのまま雪音をぎ払う。


「……ッ!!」


ゴロゴロと地面を転がり、よろける体で体勢を整えるも、再び腕が伸びてきた。

低い姿勢のまま地面を蹴って、伸びてきた手の下を走る。

けれども、腕の数がどんどん増えていく。

避けても避けても、伸びてくる腕に、次第に避けきれずに攻撃を受けた。

転がる雪音を真っ黒い腕が捕まえるとギリギリと雪音を締め上げる。


「アッハハハ!!……ワタクシ、と、同じ苦シミ……味わエ……!!」

「ッぁああああああ!!」


ミシミシと体が軋む。

内臓が圧迫されて口から血が出た。


「ガハッ……!!」

「死ね……シネ死ねシネ死ねェエエエエエエ!!!」


グンッと雪音を捕まえていた腕が、紅葉の側へと引き戻す。

血を吐く雪音を憐れむように見る紅葉。


「貴女ヲ……喰らえば、強くナレルカシラ……」


紅葉が雪音の頬を撫でる。

瞬間、雪音が吐息を吹きかけた。


「なにを……!!」


紅葉の顔が凍る。

一瞬黒い腕の力が緩んだ。

雪音はそれを見逃さず、腕から抜け出した。

そして静かに紅葉を抱きしめる。


「寒さに凍えて眠れ」


紅葉の体がパキパキと抱きしめられた部分から凍った。

彼女から生えた真っ黒い腕までもしっかりと凍らせる。

まるで氷のオブジェだ。

雪音は一息つくと、口元の血を拭った。


「仮死状態ならまぁ、許されるじゃろう。殺してはおらんしな」


へたりとその場に座り込む。

半妖と言えど、怪物の力を借りた鬼との戦いは思いの外身体にこらえた。


「姐さーん!うわぁお。オシャレな置物だね。この館にピッタリ」


パタパタと駆けてきた七曲は両腕に人間を抱え、手には縄を持っていた。

雪音が凍らせた紅葉を見つめて感嘆の声をあげる。


「九重は?」

「もう来るんじゃないかな~?無事に戻せる子達は怪物から戻したし」

「……そうか。注射はもう一本も残っておらんかえ?」


雪音の言葉に、七曲は凍っている紅葉に視線を向け、ああと察した。

そして困った顔をする。


「ごめんねぇ。全部使っちゃったよ」

「……ならば紗紀の判断を待つしかないな。……九重も終わったようじゃし。楓らと合流するとしよう」


 ◇◆◇

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