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第二十話:最終決戦。

15最終決戦。

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「なんで!どうしてわたくしなんかを……!」

「知らないよ。アンタの処遇は紗紀が決める。まぁ、あの子の事だ。アンタを殺そうとなんざ思わんじゃろうがな」


雪音の発した言葉に、紅葉はまさかと思った。

今頃怒った章に酷い目に合っているに違いない。

そして、怪物を放って仲間を殺そうとした自分をどうして生かしておこうだなんて思うだろうと。

ましてや人間の女だ。

相手が恐怖の対象とあらば、殺せる内に手を打とうとするに違いない。

そう、紅葉にはそう思わざるを得ない過去があった。

彼女は人間と鬼との子供。

半妖としてこの世に生を受けた。

人間にも鬼にもなれなかった彼女は行き場が無かった。

人間には恐怖の対象として怖がられ、石を投げられみ嫌われた記憶しかない。

鬼には弱者と嘲笑あざわらわれ、あらがえない暴力と屈辱を受けた。

そうして行き着いた先が、この洋館だった。

誰も寄り付かない、まるで自分と似たような孤立した静かな場所。

そして、この敷地を購入した倉橋章くらはしあきらと出会う。

章は妖怪を見慣れていた事もあり、紅葉と出会っても微塵みじんも驚かなかったし、怯えなかった。

むしろ怯える紅葉にその手を差し出したのだ。

それから彼女は章の為になんだってした。

この汚れた館を隅々まで掃除し、美味しい紅茶の入れ方を研究し、後からやって来た幸生には嫌われながらも上手く距離を保って今までやって来たのだ。

紅葉にとって章は自分を肯定してくれる全てだった。

何者にも代えがたい程に、愛おしい存在。

だからこそ、突然現れた紗紀の存在が何より憎くて仕方が無かった。

自分の存在を揺るがす人物。

自分のこれまでの苦労も一切無く、無償の愛を章から与えられるズルくて許しがたい存在。

そんな人物に殺されるのも生かされるのも気に食わなかった。


「……ッ、あぁああああああ!!」

「な、なんじゃ!?」


突然叫びだした紅葉に、雪音は思わずその手を離してしまった。

ゴロリと地面を転がる紅葉は、ギチギチと体に巻き付かれている黒い腕を引きちぎろうと体に力を入れる。


「アンタの力じゃ脱出は不可能じゃよ。鬼と言えど、半妖ではな」

「うぁあああああああああ!!」


雪音の言葉を否定するように叫び声をあげた。

屈辱的で、惨めで仕方がない。

爪に力を入れて、伸ばす。

ガリガリと掻きむしり、かすかに爪の先が外へと出た。

紅葉は力を入れて、そこから切り裂く。


「ぁあああああああああああ!!!」

「じゃから無理じゃと言って……何!?」


ブチブチと引き裂いて抜け出した紅葉に、雪音は瞳を見開いた。

荒い呼吸をしながら紅葉は、雪音から距離を取る。


「やり合う気かえ?」


雪音が手をかざし、攻撃態勢に入った。

紅葉は懐から何かを取り出すとそれを飲み込んだ。

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