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第二十話:最終決戦。
14最終決戦。
しおりを挟む呆然と突っ立っている楓の肩に、神鳩がぽんと手を乗せる。
「うるさい」
何も言われてはいないが、同情されている事だけは痛いくらい伝わった。
楓は深い溜息を吐き出すと、気持ちを切り替える事にした。
「神鳩。全部屋からカーテン取って来て」
「あい、分かった」
神鳩は一つ頷くと、夜空へと飛び立つ。
楓は重い足取りで七曲達が避難させた人間を探しに向かった。
◇◆◇
九重は研究室内で怪物の攻撃を躱しながら、一体一体、体に触れて燃やしていた。
問題なのはまだ怪物になりきれていない方である。
殺すのは簡単だが、生かすとなると逆に難しい。
「ちょっと!なんでこっちを攻撃して来ますの!?敵はあちらよ!あの狐ですわ!!」
そんなさなか、なぜか紅葉まで怪物に攻撃されていた。
九重を指差して声を張り上げるけれど怪物にはその声は届いていないようだ。
「ひぃッ!?離しなさい!やめて!来ないで!!」
怪物の真っ黒い腕に捕まった紅葉が、怯えたように声をあげる。
腕も足もがんじがらめになった紅葉は、これは罰なのだと思った。
嫉妬心に駆られて紗紀に当たってしまった事。
浅ましい自分の思考に、章によって切り捨てられたのだろうと。
真っ黒な腕が全身を覆うように絡みついてきて、視界を徐々に塞いでいく。
そんな中、最後に視界の先に映ったのは九重の姿だった。
(どうしてわたくしは……)
見下して嘲笑った敵に手を伸ばしているのだろう。
どうして、まだこんなにも生きたいと、生にしがみついているのだろう。
このまま死んでしまうのが、恐ろしく心細かった。
震えて涙が溢れる程に。
視界が、真っ暗になった。
体は動かない。
ギリギリと締め上げられて苦しい。
(わたくしはこのまま死んでしまうの?)
自分の放った怪物で返り討ちに合うだなんてなんて滑稽だろう。
そうだ、このまま生きてても恥をかくだけ。
それならばいっそ、ここで朽ちた方がいいのかもしれない。
(どうせ助けてくれる者なんていないのだから……)
紅葉は諦めたように目を閉じた。
耳元で何かをつんざく音がした。
ベリベリと剥ぎ取られる音と、真っ暗闇とはまた違う薄暗さが視界に入る。
「貴様は阿呆なのか?」
そこには真顔で罵倒する九重の姿があった。
「なッ!?」
「自分が放った敵で死にかけていて、阿呆と言わずしてなんと言うんだ」
紅葉はぱくぱくとまるで鯉のように口を開閉させるが、もっとも過ぎて言葉にならない。
何よりまさか九重が自分を助けてくれるなんて夢にも思わなかった。
「それにしても、鬼の割に弱すぎる。鍛錬不足なんじゃないのか?」
九重の言葉に、紅葉は酷く傷ついた。
抗えない苛立ちが沸々と湧いてくるのに、言い返せずに悔しくて唇を噛みしめる。
「雪音、こやつもこのまま外に連れ出せ。怪物の腕に縛られて身動きは取れん」
そう、顔部分は腕を引き剥がしたが、それ以外はそのままなのである。
腕自体は怪物本体から切り離されていた。
ぽいと放るように渡されて、雪音は渋々受け取ると半ば引きずるようにして彼女を外へと連れ出した。
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