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第二十話:最終決戦。
13最終決戦。
しおりを挟む楓は神鳩と共にユウリの言っていた、燃えている場所を目指した。
炎は上がってはいなかったが、焦げ臭い匂いとそれを凌駕する異臭に、恐らくここだろうと降り立った。
窓へと近づけば、突然背後から誰かに肩を掴まれた。
「!」
驚いて振り返れば、頬に突き刺さる指。
目の前にはどこか満足そうな七曲が笑顔で立っていた。
「その指へし折ってもいい?」
苛立ちを顕にする楓に、雪音が代わりに七曲の指を掴んで本来曲がらないだろう方角に曲げようとした。
「あイタタタタ!姐さん痛ッ!」
「空気も読まずにお馬鹿な事をするからじゃ」
ごもっともである。
雪音は涙目になる七曲から、パッと手を離すと楓へと視線を向けた。
「なぁ。なんでずぶ濡れなんだ?」
目が合った瞬間、楓が気になっていた疑問を口にする。
あんなに大きな月が出ているのだ。
雨が降るわけがない。
未だに髪から雫が滴るほどに濡れている二匹を、楓は不思議そうに見つめた。
「……室内で炎を扱った馬鹿たんがおってじゃな……。上から水が……」
「スプリンクラーか。それで火災報知器が鳴ってたんだな」
あのけたたましい音はそれか、と楓は納得する。
「それにしても。良く来てくれた。先程、人間を数名ほど救出した。危険に及ばない場所へと運んだのじゃが……みんな裸体故このまま放置はいかがなものかと困っておったのじゃ」
「ら、たい……?」
雪音のまさかの発言に、楓は上手く漢字に変換出来なかった。
高校三年生という思春期真っ只中なのだ。
反応に困るのも致し方がない。
「適当に布切れでも調達して来てやってくれ。後いつ目を覚ますか分からんから、混乱を招かぬよう、上手いこと指揮を執ってくれ。頼んだ!」
言うが早いか、雪音は急いで壊れた窓から室内へと乗り込んで行った。
「よろしく頼んだよ~!あ、そうだ。ねぇねぇ、かーくん。注射器何本かちょうだい?まだ中に怪物居るんだよね~」
ぽんと、立ち尽くす楓の肩を叩いて、七曲はお願いごとをする。
「誰が“かーくん”だよ。変なあだ名付けるな」
楓は呼び名に文句を言いつつも、神鳩に手を差し出した。
神鳩は袖口から注射器の入った箱を取り出すと、楓の手の平に乗せる。
楓はそれをギュッと力を込めて握ると、ぎこちなく声を発した。
「俺がそっち行くからお前交代しないか?」
「うーん。それは構わないケド。飛べるキミが室内に居るより、布切れ集めてくれた方が断然効率良いと思うよ?それに目が覚めた時に妖怪が側に居たら怖がらせちゃうと思うし~」
七曲の言うことはもっともだった。
楓は眉間を親指と人差指でつまんだ。
「……そうだな」
渋々了承する。
同意を得られたのを確認して、七曲は注射箱を受け取ると雪音の後を追って窓から室内へと飛び込んだ。
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