324 / 368
第二十話:最終決戦。
10最終決戦。
しおりを挟む「七はここに残って。僕と優一は邪魔になるから一旦外へ出るよ。春秋達は船を破壊するって言ってたし。そっちの手伝いして早く終わらせたら加勢連れて戻って来るから!」
「……ユウリくん。うん、分かった。お願いしてもいいかな?」
七曲の言葉に、ユウリは笑顔で答えた。
「任せて!」
ユウリと優一が、壊れた窓から外へと抜け出す。
七曲と雪音は顔を見合わせ、炎の先へと駆け出した。
そのタイミングで、炎を感知したスプリンクラーが稼働し、一気に室内に水しぶきが上がった。
「うわっ!?雨!?なんで!?この炎を通ってく分には助かるケドさぁ~。ずぶ濡れじゃん……」
「呑気な事言っとる場合じゃないよ!この水じゃ……いくらあの九重でも狐火が使えん」
雪音の言葉に、七曲は、あ!と息を飲んだ。
炎の海が勢いのあるスプリンクラーの水で随分大人しくなってしまった。
「フフッ。アハハハ!!わたくしがなんの勝算も無しに戦いに挑むとお思いで?フフッ。馬鹿にしてくれますわね。お死になさい」
「フン。攻撃が狐火だけとでも思っているのか?浅はかだな。貴様とは越えてきた死線が違う」
「いつまで、強気でいられるかしら。見ものですわ。貴方の炎のおかげで、わたくしが硝子を割る手間が省けましたのよ?」
声高らかに笑う紅葉の背後には無数の怪物が蠢いていた。
そして、九重の背後にもまた、影が蠢いているのが分かる。
炎が落ち着いたからか、スプリンクラーの水はポタポタと水滴を垂らすだけとなっていた。
警告音も、赤いランプの点滅も、スプリンクラーの水を浴びたせいか静かだ。
「ココちゃーん!」
大きな手をぶんぶん振りながら場にそぐわないノリで現れたのは七曲だった。
「なんですのあの大型犬は」
「知らん」
紅葉があからさまに嫌そうに眉間にシワを刻めば、九重は静かに他人のフリをした。
「ちょっと待って!ここに倒れてるのって……ニンゲンだよ!姐さん!!」
割れたカプセルの側で、一糸まとわぬ姿で倒れ込んでいる人間が数人目につく。
「もうバカ!ココちゃん!死人出しちゃダメだってば!!」
コレだから脳筋は!!と七曲が叫んだ。
九重の額に怒りマークが見えそうなほど、苛ついているのが見て取れる。
「うるさい。人間連れて外へ出ていろ」
「任して!姐さん、ちょっと手伝って!ココちゃんなら大丈夫だよ、いくつもの死線をかいくぐってるらしいから!」
わざとらしくそう言って七曲は人間を二人、両脇に抱えると、近くの割れた窓ガラスから外に出て、安全そうな場所へと避難しに向かった。
雪音もそれに加勢する。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
くろぼし少年スポーツ団
紅葉
ライト文芸
甲子園で選抜高校野球を観戦した幸太は、自分も野球を始めることを決意する。勉強もスポーツも平凡な幸太は、甲子園を夢に見、かつて全国制覇を成したことで有名な地域の少年野球クラブに入る、幸太のチームメイトは親も子も個性的で……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
QA高校ラジオの一刻
upruru
ライト文芸
初めまして。upruruです。初めての小説投稿です。ジャンルは、コメディです。異世界に飛ばされてバトルを繰り広げる事も無ければ、主人公が理由もなく何故か最強キャラという事もありません。登場人物は、ちょっと個性的というだけの普通の人間です。そんな人達が繰り広げる戯れを、友人集団を観察している感覚でお付き合いして頂ければ幸いです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる