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第二十話:最終決戦。

03最終決戦。

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「ックソが!ボクの作った人形の癖に!!壊れた人形の癖に!!」


ギリギリと歯を食いしばって怒りを噛み殺すと、幸生は立ち上がって再び手をあげようとした。

紗紀は思い出して、ウエディングドレスの胸元に押し込んだ御札おふだを取り出す。


「風神よ我が意思に力を急急如律令!」


紗紀の呪文で室内に風が吹き込み、幸生のみを吹き飛ばした。

壁に背を打ち付けて、彼はズルズルと床に座り込む。


(このままじゃ危険だ!とりあえず足枷あしかせだけでも外さなきゃ……!)


紗紀は急いで九尾狐へ変化をすると、ベッドの足を壊してかせを外した。

試しに足首に付いている枷を両手で力いっぱい引っ張ってみた。

人間とは違って握力も格段にあがるのか、鉄の枷が砕けるように壊れた。


「やった!……優一さんも、ありがとう」


ギュッと抱きつく彼の頭を撫でる。

なんだか幼い子どものようだ。


(後はミタマさんを助けて、この場所から出よう……!)


紗紀がミタマへ視線を向けようとした時、ふらりと立ち上がった幸生が目に入った。


「絶対に、許さない……!殺す……!」


幸生は自分の腕に注射を刺すと、液体を押し込み空になった注射器を投げ捨てた。

紗紀にはその注射器に見覚えがあった。

紅葉がミタマに刺した物と類似している。

徐々に苦しみもがき始めるその姿はまるで、薬を飲んだ七曲の最初の症状のようだった。

紗紀は慌ててミタマを見る。

けれど彼からは黒い手足は生えていなかった。


(どういう事……?あの薬とは違うの?)


「フハハッ!生憎ボクは醜いモノが嫌いでね。美しいモノは美しいままに保存して置きたいタイプなんだ。……ッ、けど、この、薬は……はぁ、実験段階だから……っく、意思の制御が……効かないッぁあああああああ!!!」


瞳を真っ赤に染めて、幸生が紗紀へと走り出す。


「風神よ我が意思に力を急急如律令!」


紗紀の声に従い、風が再び幸生を吹き飛ばした。

けれど、壁にぶつかっても直ぐに身を起こして駆けて来る。

紗紀の手に持っていた風の札が灰になって消えた。


(どうしよう……!他に傷つけない術は……)


次の手に悩んでいる内に、幸生が目前に迫りくる。

瞬間、ガシャンと激しい金属音が響いた。

鎖が幸生に当たり、ぎ払う。


「え……」


そちらに目を向ければ、鎖を引きちぎったミタマがいた。

その目は真っ赤のまま、正常には見えない。


(待って、敵が二人!?)


青ざめる紗紀。

どう考えても分が悪い。

ましてや片方は好いている相手だ。

攻撃なんて出来るわけがない。

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