上 下
301 / 368
第十九話:話し合い。

10話し合い。

しおりを挟む


「先に言っておくけど、兄さんを説得しようだなんて思わないで。一歩間違えれば誰かしらが命を落とすよ」


春秋の言葉が、重く響いた。

紗紀ならば、説得しようと言いかねないとミタマの心を読んだのだ。

紗紀はぐっと拳に力を入れて、視線を床へと落とした。


「さて、方向性はこれで問題無いですよね。僕らも軽く食べて、少し仮眠を取りましょうか。これを、最後の戦いにしなくちゃ」


最後の時が、もうそこまでせまっていた。

紗紀達はみんなの居る休憩室へと戻った。

そこには食事を終えた者たちがふすまを開け放って大広間と化した場所でくつろいでいた。


「紗紀ちゃーん!お疲れサマ」


七曲が大きく手を振って迎えてくれたおかげで、張り詰めいていた気が和らぐ。


「怪我とかは無いですか?」

「うん!ボクは平気。……その、さっきはごめんね?ユウリくんの気持ち、ボクには痛いほど良く分かるから、彼の男気を買いたかったんだ」

七曲はしょぼんとした。

その頭を紗紀は背伸びして撫でる。

七曲もそれに合わせて膝を曲げて嬉しそうに撫でられた。


「七は悪くないよ。僕の願いを叶えてくれただけなんだ。だから叱るなら僕だけにしてほしい」


こちらに駆けてきたユウリが、懇願こんがんするようにそう告げる。


「どちらも怒らないよ。ありがとう。気持ち、とても嬉しかった」


紗紀はユウリの目線にしゃがんで、彼の頭を撫でる。

ユウリは子供扱いされているのがなんとなく面白くなかった。


「雪音さんや九重さんは……」

「呼んだかえ?紗紀。九重は朱雀と話をしておるよ。白狼は今鏡に捕まっている」


後ろから顔を出した雪音が、お盆を片手に九重と白狼を順に手の平で示した。


「ほら、紗紀とミタマの分。持って来たよ」

「ありがとうございます」


雪音は部屋に上がって座るように促した。

紗紀の隣にミタマは腰を下ろす。

紗紀の前に雪音、その隣にユウリが座った。

七曲は九重と白狼を呼びに行ってくれたようだ。

差し出されたお盆にはいなり寿司と、お茶の入った湯呑が置いてある。


「いただきます」

「いただくよ、ありがとう」


紗紀とミタマが食事を始めた頃、九重と白狼、朱雀を連れた七曲が戻って来た。


「お~い!連れ帰ったよ~」

「あ、ありがとうございます!お話中、すみませんでした」


紗紀はお礼を口にすると、慌てて手元のいなり寿司を頬張って、お茶を飲んだ。


「慌てるな」

「そーだぜ?喉に詰まって死んでる場合じゃねェーんだからよ!」


九重が呆れたように、そう言えば、白狼もうんうん頷きながら冗談を口にする。

朱雀は無言ですっとその場に座った。


「すみません。使役させて頂いてるみなさんに力を分けて置きたくて」

しおりを挟む

処理中です...