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第十九話:話し合い。

09話し合い。

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春秋は自分が出来る事を提案した。

少しずつ方向性が固まってきたように思う。


「因みにだけど、紗紀。今ここに居るキミが本体だよね?」


改めてミタマにそう問われて、紗紀は固まった。


「……本体って言うのは、何を指すのでしょうか?」

「え」


居合わせたみんなが目を見開いて紗紀を見た。


「……紗紀、分身を作る時に、本体に少しだけ多めに妖力を残すんだよ。そうする事で解術かいじゅつした時に妖力が多い本体に分身が集まるんだ。キミ、九重の時に分身してたからてっきり分かってるものだと……」


ミタマの解説に、紗紀はひんやりと冷や汗が背筋をすべるのを感じる。

ドクドクと、徐々に心拍数が加速し始めた。


「……あの時は全員に同じだけの妖力を分けていて、戻る時も何も考えず戻ったので本体とか気にしてませんでした」


顔が青ざめていくのが分かった。

みんなが絶句する。


「……それじゃあ、今回も?」


ミタマの問に、紗紀は小さく頷いた。


「ど、ど、ど、どうしたら……!」

「待って、落ち着いて。今、術を解いたら駄目だよ」
 

ミタマが慌てて紗紀の手を握った。

下手をしたら今目の前に居る紗紀が政府の男の元へ行ってしまうかもしれない。

ガクガクと震えるその手を、ミタマは強く握る事しか出来なかった。


「……とりあえず、どっちに転んでもいいようにしましょう」


春秋が両手を打ち鳴らして、笑顔を浮かべる。

その場を少しでも明るくしようと、彼なりの配慮だろう。


「何か、方法ありますか?」


泣きそうになる紗紀に、春秋は人差し指を立てる。


「ありますよ。君は形代かたしろを持っているでしょう?人形をした御札おふだ。もしも君が術を解いて兄さんの元へ行ってしまったら、その形代を使ってミタマくんを呼び出すんです」


春秋に言われて、紗紀はミタマへと視線を向けた。

ミタマも紗紀へと視線を送る。


「そうすれば、呼び出されたミタマくんの気配を追って空間を歪ませるよ」


ね?と春秋は安心させるようにそう提案した。


「ミタマさんを思い浮かべて、息を吹き付けるんですよね?」

「うん」


紗紀が人形の御札の使い道を再確認すれば、春秋はよく出来ました、と褒めてくれた。


「紗紀さんの問題はこれで解決ですね。後は……、大洪水を起こす気なら、方舟もどこかに用意してあるはず。その方舟を壊すメンバーと、紗紀さんを救出するメンバーに分けようか。方舟は僕らに任せて」


春秋の提案に、紗紀とミタマは頷く。


「最悪、要だろう兄さんを仕留めてしまえば……落着、かな」


そう、口にした春秋の表情はどう見ても曇っていた。

離れ離れとなっても血を分けた兄弟なのだ。

痛くも痒くも無いわけがない。

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