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第十九話:話し合い。

06話し合い。

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「まぁ、少し落ち着け。ほら、せっかく彼が入れてくれたんだ。飲むと良い。喉も乾いているだろう?」


そううながされて、優一さんに似た彼が差し出していったお茶に口を付ける。

お風呂上がりなのもあって随分と喉が渇いていた。


「美味しいだろう?カモミールは」


章が笑った。
 
対面の席に座っていた紗紀が崩れるように意識を失った。

側に待機していた紅葉が紗紀を支える。

紗紀の手を離れて、テーブルを転がったアンティークのティーカップが床に落ちて割れた。


 ◇◆◇


一方、分身した片割れの紗紀とミタマ達は、みんなで境内けいだいの休憩室に休息を取りに戻っていた。


「紗紀さん!みなさんもご無事で。直ぐお茶を用意しますね。足りるかしら。座ってください」


みんなの気配を感じて玄関から顔を出したウカノが、どこかほっとした顔をすると再びバタバタと準備を始める。


障子戸しょうじとふすまを開け放てば入るじゃろう」


雪音の提案に、手の空いた者達で戸を開けた。

広くなった部屋に、それぞれ座って休息を取る。


「この様子だと、終わってはおらんのだな」


ウカノミタマの言葉に、みんなが声の主を探す。


「ここだ」


いつの間にか紗紀の肩に座っているウカノミタマ。


「実は政府側の人間は萩原春秋はぎわらはるあき、彼の兄なのだそうです」


話を切り出したのはミタマだった。


「ほう。兄、とな。だが、其方そなたもアヤツも安倍晴明の気配を感じる。一体どういう事だ?」


ウカノミタマの指摘に、今度はみんなが春秋へと視線を向けた。


「彼、倉橋章は僕の双子の兄です」

「双子!?」
 

全員がざわつく。


「それにしても似てねェーな!ビックリしたぞ!」


白狼の言葉に誰しもがそう思っていた。


「僕らは二卵性双生児だからね。双子だからと言って誰しもみんな似ているとは限らないんだよ」


春秋はどこか表情を曇らせて、口元だけで笑みを作った。


「政府とやらが安倍の生まれ変わりだって、宇迦之御魂神うかのみたまが言ってた話し、オマエにもしたよな、春秋。その時既に思い当たってたんじゃねェーのか?なんで黙ってやがった!」


白狼が噛み付くように声を上げる。


「確信が持てないのに安易な事は言えない。それに兄弟と言えど、僕らは親が離婚してからバラバラに暮らしていたからね。彼がまさか政治家になっていたとは思わなかったよ」


春秋からさらりと明かされる過去に、誰しもが言葉を失った。


「えーっと、なんつーか、人間の離婚率……相当だな!短い人生なのにげらんねェーとか」

「短いからこそ、色んな人を見てみたくなるのかもしれないね」


春秋は眉を下げて悲しげに笑った。


「それじゃあ、春秋様は、あの男が何を目的としているかは知らないってコトね?」


鴉天狗の鞍馬くらまが困ったようにそうたずねる。


「いいや、先程兄さんと会った時に、心内が少しだけ読めたよ」


彼の言葉に、みんなが一斉いっせいに春秋に注目した。

この先起ころうとしている見えない不安が明確になる。


「……兄さんは……“ノアの洪水”を起こそうとしている」

「“ノアの洪水”?」


春秋の言葉を数人が復唱した。


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