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第十九話:話し合い。
05話し合い。
しおりを挟む「空間を歪ませて、だな。神を転移させた時に発見したのだよ。君が使役した狸達は気づいてもいないようだったが」
クツクツと笑う章の言葉に、少しだけホッとした。
つまり、化け狸達は無事だ。
きっと今頃、優一が居ない事に慌てているだろうけれど。
「まだ実験段階だが、幸生の力があれば好きな入れ物を選び生き続ける事が出来る」
「……そんな、まさか」
まるで夢物語のようだ。
恐怖で手が、震える。
「問題なのが、幸生の代わりにそれが出来る者が今の所居ないところだな」
「……。あなたは人類を滅亡させて、一から何をしたいのですか?」
「そうだな。君には詳しく話してもいいかもしれない。全人類を滅亡させ、一から再構築する……。言わば“ノアの洪水”の再来だ」
「ノアの、洪水?」
「聞いたことが無いのか?地上に溢れた悪意ある人間の一掃。大洪水で一度、人間達諸共この地上を洗い流し、また一から始めるんだ。生命の繁栄を」
(そんな事があったの……?)
章の話はどこか現実味が無い。
机上の空論のようにも思う。
それなのに、どうしてこうも自信に満ち溢れているのだろう。
それを納得させる程の力を、彼は確かに手にしていた。
神々の力を無理やりに奪う事によって。
「再来って事は、最初の洪水ではその後どうなったんですか?」
紗紀の問いかけに、章は嘲笑した。
「フッ。見て分からんのか?コレが、その後の現状だ。最初からやり直した結果がコレなのだ」
今、この現在が。
そう章は憎しみを込めて口にした。
紗紀もこの世界の不条理は身にしみていた。
納得のいかない理不尽な事だらけだ。
「これが、その結果だと言うのなら、もう一度繰り返して変わるんですか?」
紗紀の心からの疑問だった。
何度繰り返しても変わらないのではないだろうか。
「これは実験の一部だ。今度は悪い芽を早い内に摘み取っていく。良い芽だけを厳選して残していくんだ。それでも、この世界は変わらないのか、見てみたい」
そんな、一個人の“見てみたい”それだけの為に、この世界の良い人まで殺されてしまうのかと思うとゾッとした。
春秋は悪意のある人間のみの一掃だと言っていたが、章に関してはもれなく全員なのだ。
紗紀はなんとも言えない気持ちになった。
「そして、君の役目は私の妻となり、後の人類の繁栄の一端を担ってもらう」
「……っ」
確かに“花嫁になれ”と言われてここに来ている。
それは、つまりそういう事を含むのだろう。
(章さんの子を……?)
脳裏にミタマの顔が浮かんだ。
(絶対嫌だ。早く情報を集めてミタマさんの元に帰らなきゃ……!)
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