294 / 368
第十九話:話し合い。
03話し合い。
しおりを挟む泣きぼくろの位置まで一致していた。
見間違うはず無い。
ぞわりと恐怖が背筋を凍らせる。
なぜなら彼は紗紀を庇い死んだのだ。
命が消えるのを確かに目の前で見た。
そして紗紀自身が死の淵にいた時も、彼と会話を交わした。
そんな彼がどうして今、目の前に居てこうして動いているのだろう。
不思議を通り越してかなりホラーだ。
「ああ、もしかしてお前、ユウイチを知ってるの?」
その声は優一に似た彼から発せられたものでは無かった。
彼の後ろに立っている、長髪の男性が少しばかり驚いた顔をして紗紀を見ていた。
その男は白衣を着ていて、あっちこっち汚れている。
「あの、どちら様ですか?」
「僕が先に質問しているのに答えないなんて失礼な女だなぁ」
彼の棘のある言葉に、最もだと反省する。
「すみません。優一さんを知ってます」
「あっそ。で?章、なんでこんな女連れて来たのさ?」
そう素っ気なく言うと、視線を章へと向けた。
紗紀には興味が無いと言いたげだ。
「彼女は白花紗紀くんだ。今回の実験台の一人だよ」
「七人集めたアレか。あぁ!もしかして妖力が定着したんだね?普通の人間でも可能だって事がとりあえず実証されたわけか」
やっと紗紀に興味が持てたのか、ぐるりと紗紀に視線を向けるとツカツカと歩み寄り、紗紀の顎を持ち上げた。
「なっ……!?」
長髪の男性の恐ろしく整った顔が間近に迫って、思わず息を止める。
否、“止まった”の方が正しいかもしれない。
「何をしている?許可無く彼女に触れるな」
章が白衣の男に一喝した。
「え?なんで?ちょっと見ただけじゃん。女になんか興味無いし……って、まさか章さぁ。この女の事好きだなんて笑える話し、しないよな?」
最初はおちゃらけた口調だったのに、次第に高圧的に問いかける。
その表情は笑っていなかった。
「好きだの嫌いだの、それこそ興味が無いな。くだらん。目的を忘れたのか?」
章がジロリと睨んだ。
そんな彼に対して、白衣の男は怯えるどころかどこか恍惚とした表情で章を見た。
それでこそ、とでも言いたげだ。
「もちろん、覚えてるよ!僕らの悲願だもんね!」
にっこり笑顔でウキウキとしだし、意味深めいた事を口にするその長髪白衣の男。
「人類を壊滅させるんだよね?早く殺しちゃおーよっ!」
「準備は整っているんだな?」
「もっちろん!章のおかげで、神の力も吸い取れてるし!あ!この子の力も吸い取らなきゃだね!」
白衣の男が再び紗紀を見ると、彼女の首を掴んだ。
「手を離せ」
章の言葉に、白衣の男はムッとする。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
くろぼし少年スポーツ団
紅葉
ライト文芸
甲子園で選抜高校野球を観戦した幸太は、自分も野球を始めることを決意する。勉強もスポーツも平凡な幸太は、甲子園を夢に見、かつて全国制覇を成したことで有名な地域の少年野球クラブに入る、幸太のチームメイトは親も子も個性的で……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
叶うのならば、もう一度。
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ライト文芸
今年30になった結奈は、ある日唐突に余命宣告をされた。
混乱する頭で思い悩んだが、そんな彼女を支えたのは優しくて頑固な婚約者の彼だった。
彼と籍を入れ、他愛のない事で笑い合う日々。
病院生活でもそんな幸せな時を過ごせたのは、彼の優しさがあったから。
しかしそんな時間にも限りがあって――?
これは夫婦になっても色褪せない恋情と、別れと、その先のお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる