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第十八話:一難去ってまた一難。

20一難去ってまた一難。

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「なっ!?」

「口を閉じろバーカ!舌を噛むぞ。オマエに何かあったらマミ達が泣くんじゃねェーのか?」

「……!」

「それに、だ。十二天将がひとりを呼び出せる力だぞ。詰めが甘ェーな。テメェの変化なんざ、お見通しだっての!目の前に立ったら瞬殺されてたぜ?おそらく」


白狼の推測に、ユウリは悔しみに歯をくいしばった。


「僕は結局我儘言って、連れてきてもらっても……何の役にもたたないんだ……」

「バッカだなァオマエ。まだまだ若ェんだからさ、これからだろ。こんな度胸はあんだから!自信持て」


白狼の言葉に、なんだか少しだけ救われた気がした。


 ◇◆◇


「替え玉を送るようなら皆殺しだ。次は無いと思え」


政府の男は腕組をして、見下ろす。

紗紀は意を決した。


「私が、行きます」


そう言って歩き出す。


「紗紀!!」


ミタマが叫ぶように紗紀の名を呼んだ。

けれど、背中越しにしがみついて来る感覚かする。


「振り返らないでください。あれは私の分身です」


背後から紗紀の声が聞こえた。

走り出そうとする九重の腕を、ミタマが掴むと首を横に振るう。


「貴様……!紗紀を渡して命拾いする気か!?見損なったぞ!」


怒鳴る九重に、七曲が体当たりを食らわせて二人して地面へと転がった。


「何をするをする!どけ!」

「ごめんごめん~。……あれは紗紀ちゃんの分身だよ。彼女の指示だから安心して」


耳元で、小声で話す七曲。その意図に九重はほっと安堵の息を吐いた。


「紗紀!!行くな!!」


雪音が走って紗紀を背中から抱き寄せる。


「……泣かないでください。これは、分身です。ひとまず、これで手を打っておきましょう」

「……そうじゃったか。紗紀はほんに賢い女子じゃ。分身と言えど、生身。気をつけるが良い」


雪音は名残惜しそうにその手を離した。


「行ってきます」


そう言って再び歩き出す紗紀。

みんなが止める声をあげる。

けれど紗紀は振り返らない。


「紗紀くん、よくぞ参った。さぁ、ここまで来るがいい」


そう政府の男が言うと、黒い怪物が体から手を生やしてゆっくりと紗紀を持ち上げた。

政府の男の隣へと立たされる。


「約束、です。彼らには一切手出しをしないでください」

「ああ、約束は守ろう」


厳しい視線を向ける紗紀に、政府の男はクツクツと喉奥で笑って答えた。


「白花紗紀は頂いた。ゆっくり休むといい。人類を滅亡する時、再び垣間かいま見るやもしれんがな」


政府の男は高笑いをすると、春秋と同じように空間を歪めて分身の紗紀と共に消えた。


「……消えたね。よし、ひとまずみんな無事かい?」

「紗紀ちゃんが無事じゃないでしょぉおおおおお!?」


ミタマの言葉に間髪かんぱついれずに鞍馬が叫びながらツカツカと歩いて来る。


「紗紀ちゃんは一応居るよ?」


七曲の言葉に、ミタマの後ろからひょっこり顔を出す紗紀。


「分身の術ですか?素晴らしいね」


春秋が驚いたようにじっくり紗紀を見た。

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