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第十八話:一難去ってまた一難。
17一難去ってまた一難。
しおりを挟む現に神々はみな行方不明で、唯一ウカノミタマが紗紀の不慮の事故によって偶然発見出来たのだ。
だから、現状を把握することが出来たと言える。
「つーか、灯。キシマとの契約、破棄して出ってたお前じゃ戦えないだろ。お前も下がってろよ」
ふと思い出したように楓が冷たくあしらう。
確かに丸腰で戦える相手では無い。
ましてや変化も出来ないとなれば尚の事だ。
するとシャンと鈴の音が鳴る音がした。
背筋がゾクリと粟立つ嫌な気配を感じる。
皆が一斉にそちらへと視線を向けた。
その先には先ほど倒したばかりのはずの黒い怪物の群れと、その中央に見知った恰幅の良いおじさんが腕組みして怪物の上に立っていた。
「あ、の人は……政府の人……!!」
そう、紗紀達七名を集めたその男だ。
けれど灯の時のように怪物に体を乗っ取られている風では無かった。
むしろ指揮を執っているようにも思う。
「良くぞここまで成長したな。……白花、紗紀くん。……いや、それにしても凄い数だな。分裂か?大歓迎だが」
口を開いたのは恰幅の良い政府の男だった。
一瞬驚いた顔をして紗紀の分身を見渡すと、次にニヤリとニヒルに笑う、その男に思わず身震いする。
「……あなた、あなたは!私達を集めて妖怪を討伐するように言っていたのに……その黒い生き物は何なんですか!」
紗紀は震え上がる体を、拳を握り締める事で落ち着かせながらも叫ぶ。
(話が違うじゃない)
納得がいかなかった。
春秋や白狼が言っていた通りだ。
黒幕は春秋では無くてこの、政府だった。
「もう疲労困憊だろう?疲れただろう。取引をしようじゃあないか。君は賢い女だ。そうだろう?」
どこか演技臭い言いようで言葉を並べるその男。
確かに疲労困憊だった。
ご飯も食べず睡眠も取らず戦い続けている。
ここにいるみんな疲れが溜まっているに違いない。
「……取引、とは……?何ですか?」
口を開いたのは別の紗紀だった。
紗紀本人も驚いて、疑問を口にした化け狸の紗紀へと視線を向ける。
「ここに居る全員の命を保証する。その代わりに、だ。白花紗紀くん、君は私の花嫁になれ」
「……は?」
その場にいた全員の声が重なった。ポカンと口を開けてマジマジと政府の人を見上げる。
「だぁあれが嫁にやるかこのエロオヤジ!!!」
「紗紀ちゃぁああああん!!無事で良かったわぁああああああ!!!ってか、紗紀ちゃん多ッ!?」
空から叫びと共に強風が吹き荒れた。
「白……」
紗紀が白狼と鞍馬の名を呼ぼうとして、その口を紗紀に変化した化け狸によって塞がれた。
白狼が放った強風は政府に届く事なくすっと消える。
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