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第十八話:一難去ってまた一難。
12一難去ってまた一難。
しおりを挟む九重は大きくため息を吐き出す。
「……化け狸も来たのか?」
九重がそれを見切って言えば、ユウリが変化をしたまま紗紀の声で残念がる。
「やーっぱり分かるか~。でもまぁ、驚いた顔見れただけでも良しだよね?」
うんうんとひとり納得するユウリ。
驚かすんじゃないよ!と雪音が怒った口調で返すが、その表情はどこか疲れ切っていた。
みんなそれぞれに服も体もあの真っ黒な液体で汚れたり、破けたり怪我も負っているようだ。
きっと壮絶な戦いだったに違いない。
「……みなさん、ご無事で良かった……。心配かけてしまい、申し訳ありません」
紗紀が思わず涙を拭えばバサリと翼が羽ばたく音がした。
見上げた先には真っ白な翼を羽ばたかせた楓の姿が。
「……なっ!お前!!……大丈夫、なのか?」
「灯さん無事だよ!」
紗紀が灯を引き寄せてそう声をあげれば、楓が呆れたように口を開いた。
「灯が無事なのは確認済みだ。つーか、お前の方が腹に風穴開いてたろ?」
楓の一言に、そうとはつゆ知らずな七曲達三匹は驚愕して紗紀を見た。
「ええっ!?紗紀ちゃん風穴って何!?大丈夫なの!?」
一番リアクションが大きかったのは七曲だ。
紗紀は困った顔をして事情を説明する。
◇◆◇
一方その頃、空での攻防が気になった朱雀は空高く飛び、懐かしい気配のする者の元へと向かっていた。
その最中、物凄い勢いで何者かが真横を過ぎ去った。
振り返り地面を見た時にはドゴォオオオ!!!とそれはそれは大きな轟音を立てて地面にぶち当たる。
土煙が舞った。
攻撃をした方へと視線を向ければ、月の明かりに怪しく光る瞳と相まみえる。
その妖艶さに、朱雀はドキリと心臓が掴まれたように跳ねた気がした。
その青年は何食わぬ顔をしてトドメを刺すのか御札を取り出しブツブツと呟く。
すると地面からツルが伸び、先ほど地面に叩きつけられた者をがんじがらめにして青年の高さまた吊り上げた。
「ああ、良かった。まだ息をしているね。ねぇ、頼むよ。僕の手を取ってくれません?」
にこり、笑っているはずなのに、威圧感を感じる。
なぜだか朱雀の方が身震いをした。
目の前で吊るし上げられているのはどこからどう見ても子供だ。
けれどその妖力から察するに直ぐに大天狗だと分かった。
(あの大天狗をまるで子供扱い、だと……?)
ヒヤリと背筋を冷や汗が伝う。
ごくんと生唾を飲み込んだ。
この強さ、この霊力。
どう考えてもかの安倍晴明じゃないか。
弱々しくその青年の手を弾く大天狗に、青年はデコピンをお見舞いする。
「強情だなぁ。どうしたら僕に付くの?毎日お菓子を作ってあげようか?白狼が」
「なんで俺だよ!!自分で出来る事提案しろ!」
バシンと青年の頭を叩くのは先ほど紗紀と会話を交わしていた木葉天狗、白狼だ。
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