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第十七話:激動。

12激動。

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すると雪音と七曲が飛ばされて来た。


「雪音さん!!七曲さ……っ!?」


思わず声をかければ、隙を突かれて真っ黒な手に腕を掴まれる。

それを瞬時に傍にいたミタマが焼き切った。

けれど今度はミタマの手足が捕まって引き上げられる。


「ミタマさん!!!」


叫ぶけれど次から次へと迫り来る腕を対処するのに一杯一杯だ。

ドクンと嫌な音がして鼓動が一際ひときわ大きく跳ねる。


(嫌だ。待って)


少しの油断で死と直面する現実に震える。


(怖い)


どんどん離れていくミタマ。

真ん中の口が大きく開いて紫の舌が舌舐したなめずりしているのが見えた。


「ミタマさん!!」


(ミタマさん!!ミタマさん!!嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ!!)


頭が真っ白になりそうだ。


「ッ、邪魔を、しないで!!」


紗紀は腕を切り裂くと、次にやって来た腕をするりするりとかわして駆け出す。


(間に合え、間に合って!!)


けれどすり抜けたはずの腕が紗紀の足を掴んだ。

ドシャアア!!と砂煙すなけむりが上がる。


(嫌だ)


怖くてその先を見る事が出来ない。

顔を両手でおおう。

ポタリと乾いた土に雫が吸い込まれていった。

めそめそと泣く暇すら与えて貰えず、そのまま逆さまに宙吊ちゅうづりにされた。


(怖い)


失うのが怖い。

失ってしまうくらいなら自分が先にきたい。

その時、バサバサと羽ばたく音が聞こえた。

聞き覚えのある音だ。


「オイ!!何諦めてやがんだ!!!」


ザシュッと切りく音まで聞こえて、顔から手を離せば真っ黒な血しぶきが見えた。

グンッと地面真っ逆さまに体が落ちる感覚がして思わず目を閉じる。

けれど地面に追突する感覚は無く、代わりに暖かいしっかりとした腕にガッチリと掴まれた気がした。

恐る恐る目を開ければ視界の先に白狼が居て、ゴシゴシと乱暴に泣き顔をぬぐわれて痛い。


「何泣いてんだよ!ケガか!?」

「ミ、ミタマさんが……」

「はぁ!?」


再び泣きそうになれば白狼が凄む声がしてビクリと肩が跳ねた。


(そうだ)


白狼からしてみれば所詮しょせんは他人事。

今はそれどころじゃないだろう、とそういう類のことを言われると思った。

けれど白狼はあごで指し示す。


「ん!」


促される先を見ればお姫様抱っこをされているミタマの姿があった。


(え)


目を見開いてミタマをマジマジと見る。

ミタマを抱えているのは楓の狛犬だ。

彼もまた真っ白い羽を広げていた。


「ミタマ、さん……」

「心配かけてすまない。そして早く下ろして貰えないだろうか……」


不本意だと言いたげだ。

何より男にお姫様抱っこをされるのもまた微妙だとミタマは感じていた。

居心地が悪い事この上ない。

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