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第十七話:激動。
03激動。
しおりを挟む「本殿とは別だけど、ここも本殿に居る神にはしっかり見えているんだよ」
ミタマは狛犬を置くとそう話してくれた。
「よいしょっと。じゃあ、お次はみんなの所だね!」
七曲が狛犬の像を起き終えると、手をパンパンと叩きホコリを落とす。
「誰だ?」
不意に声をかけられて、拝殿内に居た全員が、入り口へと目を向けた。
そこには九重の姿があった。
その後ろには雪音と化け狸達が立っている。
「九重さん!みなさんも!」
「おやおや、えらく早いお帰りじゃな」
雪音が驚いたように視線を巡らした。
「ナナちゃん!良かった!無事だったんだね?」
「急に消えたからビビったぞ!」
「心配したよ」
「心配したー」
マミとムジナ、ユウリとカイリが口々にそう言って、七曲の元へ集まる。
カイリは七曲の膝にぎゅっと抱きついた。
「ごめんね。心配かけちゃって」
七曲は膝を折ると、彼らをぎゅっと抱きしめる。
「少しの間こちらに狛犬の像を匿ってもらいたい」
「ああ、付喪神って媒介が壊れたら消えるんだっけ?」
ミタマの言葉に、化け狸のユウリはその像へと視線を投げかけて言葉を紡ぐ。
「それから……九重さん、雪音さんに力をお借りしたくて参りました」
「戦況が悪そうだな」
紗紀の様子を見て、九重が何かを察したようだ。
「それなら、僕も行く」
ユウリが参戦する意思を示す。
「俺も!」
「私も!」
「ぼくもー」
それを皮切りに化け狸達が手を上げ始めた。
「ごめんね。みんなは連れていけない」
悩みつつも、紗紀はしっかりとそれを断った。
「ここには優一さんも居るから。みんなで守ってほしい」
化け狸達が黙り込む。
「ここにはもう、あの怪物は現れないの?」
ユウリの問いかけに、紗紀は言葉を失った。
ハッキリと大丈夫とは断言出来ない。
「恐らくだケド、政府側が敵なら次から仕掛けて来るのは現実にある本物の神社だ。ここに怪物を送る意味は無いはず。だから人間達に元の世界へ戻ることを促したんだろーし」
白狼の言葉に、みんなが一斉に彼を見た。
「此奴は信用に値するのか?」
「紗紀の胸元から御札を奪って逃走しといて論じるのかえ?」
「ンまぁ!若い娘の胸元を弄ったの!?白狼ちゃんってば助平!!」
九重、雪音、鞍馬からの冷め切った視線が白狼へと突き刺さる。
ぐうの音も出ない。
「春秋さんに会って来たんです。ウカノミタマ様も彼を安倍晴明の生まれ変わりである事を否定されませんでした。だから白狼を私は信じます」
紗紀の言葉に、白狼は少しだけ驚いた顔をするとどこか穏やかに笑った。
信じてもらえている現実がたまらなく嬉しかったのだ。
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