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第十七話:激動。
01激動。
しおりを挟む「さて、とりあえず今やっておくべき事は……あれだね」
不意に席を立った春秋が、両手の平を打ち鳴らした。
みんなが彼に視線を向ける。
「アレってなんだよ?」
白狼が疑問をぶつける。
「えっ!ロウちゃん!?なんでココに!?」
「今頃かよ……」
七曲が白狼の存在に驚きの声をあげる。
それはそうだ。
彼は偽物の神社に居た時に行方をくらましたのだから。
「ロウちゃんがココに居るって事はまさか……」
七曲は春秋へと視線を戻す。
「キミが……ロウちゃんの、飼い主?」
「飼い主ってなんだ!飼われちゃいねェーし!!」
七曲の発言に、白狼が騒ぎ出す。
「うるさいよ。今は白狼なんか構ってる場合じゃないでしょ?で、やっておくべき事とは何だい?」
ミタマが冷めた目つきで白狼を見下ろす。
「カマえよ!!」
「うるさい、白狼。ミタマくんは狛犬の付喪神ですよね?」
春秋は白狼を見もせずに、淡々と黙らせると、ミタマに問うた。
「ああ」
「なら、あの狛犬の像が壊れてしまったら消滅してしまう」
春秋の言葉に、紗紀の心臓がドクリと嫌な音を立てて跳ねた。
知らなかったわけではないけれど、ここに来て現実味を帯びる。
「ここは時期に戦場になる。今のうちに安全な場所に移しておいた方がいいんじゃないでしょうか?だから一旦、あの狛犬像を撤去しましょう」
もっともな意見だった。
「そうですね。やりましょう」
紗紀も力いっぱい頷く。
ミタマが居なくなってしまったら、生きる気力すら失いかねない。
紗紀にとっては死活問題だ。
◇◆◇
そうして始まった撤去作業。
「ねぇ。この狛犬の下の台みたいなの、壊れても問題ないのかしら?」
鴉天狗の鞍馬が不安げに問いかける。
「……キミはロウちゃんの仲間?」
「イヤね!あんなのと一緒にしないでくれるぅ!?」
七曲の問いかけに、鞍馬は心底嫌そうに顔を歪めた。
「台座の方は破壊しても問題ないよ。ただ狛犬の方は丁重に扱って。一部でも破損させないように。気を使って」
春秋の注意に各々返事を返す。
「付喪神っつーのはニンゲンより脆いのな。つーことはさァ、ココでこの像ぶっ壊せば、オマエ消えんの?千載一遇の好機じゃね!?」
「白狼」
白狼がどこかワクワクした面持ちでそう閃けば、紗紀が低く彼の名を呼んだ。
「そんなにダメかよ!別にコイツに固執する必要ねェーじゃん!俺様にでも乗り換えろよ!」
「嫌です」
「アッハハ!振られてやんのザマァ!」
紗紀が即答すれば、鞍馬が声高々に笑った。
「秒かよ……。もっと悩めや!」
「嫌です」
そんな紗紀と白狼のやり取りを見ながら、七曲がボソリと呟く。
「いつの間にか仲良くなってる……」
「仲良くないです!」
「ウソつけ!仲良しだろーが!」
「全然仲良くない」
白狼の言葉に首をふるふると左右に振って、尚も否定を続ける紗紀。
「そうよねェ?こんなのと仲良しだなんて、思われたくもないわよねェ?」
自分の頬に手を添えて、ふぅと溜息を吐く鞍馬。
「こんなの!?おいテメェ表出ろコラァ!!」
「あらヤダおバカさん。もうココは表ですぅ~!!」
二羽の喧嘩が始まり、紗紀も春秋もやれやれと肩を竦めた。
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