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第十六話:交渉。

15交渉。

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「なぜ幼い妖怪までも差し向けたんだい?」


紗紀の脳内に化け狸達の顔が思い出される。

確かにそれは気になる点だ。


「幼い子も居た?それは……申し訳ない事をしてしまった。神社近くをうろついてた子達を確認もせずに操っていたから……」


(選んで仕向けてきてたわけじゃなかったんだ……)


「後は政府側の動きか。何がしたいのか読めないんだよな」


楓がまんじゅうを半分に割りながらそう呟く。

みんなそれぞれに思案した。

けれども考えた所で、政府の考えなんて皆目検討がつかない。


「さて、他に聞きたい事が無いならこの場はお開きでいいですか?」


質問が落ち着いて来たのを見て、春秋はそう口にした。それに対してミタマも頷く。


「そうだね。とりあえず、ここで待機していてもらってもいいかい?俺と紗紀でウカノミタマ様にお伺いを立てて来る」

「よろしく頼みます」


春秋が笑顔で頼むのを見て、紗紀とミタマは顔を見合わせ、席を立ち上がった。

ミタマはもう、紗紀の側から離れたくなかった。

あんなに怖い思いをもう二度としたくない。

そう、強く思う。

紗紀の手をそっと握る。


 ◇◆◇


「そうか。事情は分かった。安倍の子の気配をわらわも確かに感じておる」


布団に横たわっていたウカノミタマは、体を起こすとミタマの話しに返答を返した。

まだどこか、体が重だるそうだ。

側にはウカノが心配そうについていた。


「ならば、初めにウカノミタマ様が感じられたあの男……政府側の安倍の生まれ変わりは……」

「ああ。そこは気になるな。だが、知るすべを今は持ち合わせておらん。そうだろう?」

「……はい」


確かにその通りだ。

気にならないわけではないが、今真相を解き明かすのは厳しいだろう。


「大天狗を使役しえきする話しだが、其奴そやつがどれ程力を持っておるか見てみらん事には許可は出来ん。使役する力があるか見極める必要がある」


ウカノミタマの言い分はごもっともだ。

使役する力量が無ければ、任せようもない。


「確かに、そうですね。次にあの怪物が現れた時、彼の力を見せてもらいましょう」

「ああ。それによっては大天狗の件、考えても良い」


ミタマの提案に、ウカノミタマも頷く。

紗紀とミタマはウカノミタマとの話しで決まった事を、居間へと持ち帰った。

居間では白狼と鞍馬が殺伐さつばつとしてる中、春秋が適当に話しの腰を折ったりと騒がしい。

楓と神鳩かみばとは静かにお茶をすすっていた。


「これはなんの騒動ですか?」


紗紀が慌てて割って入る。


「ああ、すみません。ほら、うるさいって君達」


春秋の両脇に居る白狼と鞍馬をポカリと殴りつける。

容赦ない。


「痛ってェ!!何すんだよ!コイツが悪いんだろ!?」

「はぁあああんん!?アンタの手作りなんて食べられるワケないデショぉおおお!食あたりするワ!ボケェイ!!」

「喧嘩両成敗」


再度スパーンと後頭部を叩かれる二羽。


「本当に、お二人って仲が悪いんですね……」

「それで、宇迦之御魂神様はなんとおっしゃっていましたか?」


二羽の睨み合いに飽きたのか、春秋はミタマへと視線を向ける。

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