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第十六話:交渉。
14交渉。
しおりを挟む「春秋様ぁあああああああああ!!そんなコトがあったなんてアタシ聞いてないわよぉおおおおおお!!うぉおおおおおおおんんんん!!」
紗紀を遮って男泣きを始める鞍馬。
残虐無慈悲の面影は微塵もない。
「おい、鼻水ヤベェぞ」
「鞍馬さんティッシュです!箱ごとどうぞ!」
「うぉおおおおおおんんんん!紗紀ちゃんアリガトぉおおおおおおお!!!」
ズビーと派手な音を上げて鼻水をかむ。
しんみりしていた空気がどこかへ行ってしまった。
「そんなこんなでね、僕は大天狗の力を後ろ盾にしようと考えて、彼ら天狗達と手を組んだんだ。まぁ、力は別に僕の持って生まれた力でも十分なんだけどね。見た目がほら、ひ弱そうだから軽く見られちゃうし。見るからに力を持ってる強面集団が必要だったわけなんだ」
春秋の話しを聞く分には、今の所矛盾は感じられない。
「そういや、もう一個問題があっただろ。安倍晴明の件」
「あ」
白狼がお茶をすすりながら思い出したようにそう言う。
紗紀と春秋の声が重なる。
二人してミタマに視線を向けた。
狛犬である彼なら、もしかしたら何か分かるかもと踏んだのだろう。
ミタマは春秋をじっと見て、口を開いた。
「キミは、安倍晴明の気配を感じるよ。彼の母、葛の葉とは少しの間時間を共にしていたからね。けど……、ウカノミタマ様が安倍晴明の気配を感じ取ったあの男とはキミは違う。なら彼はなんなんだ……?」
ミタマは考え込む。
ウカノミタマは確かに、彼を安倍晴明の生まれ変わりだとそう言った。
けれど、ミタマもウカノもそれを感じ取れなかった。
でも今目の前に居る春秋は、ミタマですらあの安倍晴明の生まれ変わりだと感じられる。
「や~安心した!これで無罪確定だね。良かった~。独りよがりの妄想じゃなくて」
大げさに声をあげて胸を撫でおろす春秋。
ここで違うと判断されてしまえば、一気に敵だと判断されてしまう。
「それにしても白狼、僕に興味無さ過ぎ……」
ジト目で隣に座っている白狼を見れば、テイッシュで器用に鶴を折っている。
「いや~俺様天才的過ぎねェ?これ、大傑作!」
「一体何羽折ってるの!?って、そうじゃない。話しちゃんと聞いてて」
それにはさすがの紗紀も突っ込まざるを得なかった。
「とりあえず聞きたい事はそれくらいですかね?」
春秋は慣れっこなのか白狼の態度を気にも止めていないようだ。
質問が途切れそうになって、紗紀は慌てて気になっていた事を言及した。
「……あ、後、白狼はどうやってあの偽物の神社へ来たんですか?」
「あぁ、それはさっきみたいに空間の歪を使ったんですよ。白狼の話しだと通常の神社より結界が強めだって教わったので。でも無事にたどり着けて良かったよね。下手したら良く分からない所に置き去りにされてたかもだし」
空間を歪ませて作る道は、なかなかに難しい事だと先程体感済みだ。
空中に放り出された時の事を思い出して、紗紀は震え上がる。
完璧じゃないからこそ、白狼もきっと怖い思いの中あの場所にたどり着いたのだろう。
ちらりと白狼を盗み見れば、作った鶴を横並びに並べて満足げだ。
彼に恐怖という感情は存在するのだろうかと疑いたくなった。
「もう一つ気がかりなのは……」
次に口を開いたのはミタマだ。
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