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第十六話:交渉。
03交渉。
しおりを挟む「これで人には見えぬ」
「……人に、見えない?」
「ああ、ここには夜でも人が来たりする。巫女に宮司は夕方までおる。見つかると騒ぎになるだろう?」
ウカノミタマの言葉に、楓も納得する。
「ウカノ、部屋を」
「はい。こちらになります。どうぞ」
ミタマにそっくりな女性に楓は小さく会釈をすると後をついて行った。
「少しは頭が冷えたか?」
「……はい」
「気を引き締めよ」
ウカノミタマの言葉に、何も返す言葉は見当たらなかった。
ただただ拳を強く握りしめる。
日はどんどんと闇夜に飲み込まれて行った。
少しだけ欠けた月が空にぽっかりと浮かび始めた頃、ついにその時が来た。
シャン、と鈴の音が夜空に鳴り響く。
それは、あの妖怪が訪れる時に鳴る音だ。
ミタマ達はそれぞれに鳥居へと駆け出した。
ゾワリと背筋が総毛立つ。
今まで戦ったあの黒い怪物の気配だ、一体や二体等と言う可愛らしいものではまるでない。
凄い群がこちらに向かっているのを感じた。
ミタマは戦闘態勢に入る。
それと同時に背後からウカノ、そしてウカノミタマまでもが現れた。
「フッ。ついに来よったか。待ちわびたぞ」
「待っては駄目ですウカノミタマ様」
ウカノミタマを庇うように立つウカノ。
これから始まる戦場。
既に異臭が凄かった。
まるで腐ったものがこちらに向かって来ているようだ。
「ウカノ、境内に居る人間の意識を奪え。そして安全な場所への避難を任せる」
「承りました」
ウカノミタマの言葉に、ウカノは最敬礼をすると即座に行動を開始しする。
楓はハッと我にかえると、慌ててミタマへと視線を向けた。
「……この人数で、太刀打ち出来るか?」
「"出来るか"じゃない。"やるしか無い"んだ」
ミタマのその言葉に、決意のこもった瞳に、楓は思わずゴクリと喉を鳴らした。
太刀打ち出来なければ、“死”のみだ。
「来たわ!」
ウカノの声に前方を見れば、大群だった。
黒い塊がぞわぞわとたくさんの手足を使い凄い速さで前進して来る。
「さて、どこまで歯が立つやら。腕試しとゆこう」
ウカノミタマの合図で、それぞれが駆け出す。
鳥居の中には入れさせない。
その前に片をつける必要があった。
◇◆◇
紗紀達は、安倍春秋が作った空間の歪みを通り、稲荷神社の上空へとたどり着いた。
まさか地面の無い所だとは思いもしなかった四人は、突如空中に投げ出される事となった。
「春秋テメェ!!バカだろ!!」
「あれ!?ごっめーん!!イメージが甘かった。途中で空から見た稲荷神社ってどんな風景かなって思ったのが敗因です」
のんきにミスした原因を語る春秋。
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「オイ!意識あるか!?」
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紗紀の無事にホッと安堵すると、彼女に手土産を持たせてそのまま横抱きにして羽ばたく。
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