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第十六話:交渉。

02交渉。

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「だが、そう急くな。まずはこれから来たる逢魔時おうまがときを皆して乗り切る準備をせよ。政府の裏切りか、はたまた……安倍の生まれ変わりを名乗る男か……。どちらにせよ、向こうからこちらに手出しして来るのは明白」


ウカノミタマがミタマの肩を叩く。

ミタマはその言葉だけでは納得出来ずに居た。

待ってる間に何もされない保証なんてない。

どんな苦痛を味合わされて居るかなんて分かりもしないのだから。

不意に強い光と微かな力を感じ、ミタマは走り出す。


「焦るなと言うに……まだまだ青いな」


ウカノミタマは小さくそう呟いた。

向かった拝殿には楓と狛犬がそこには立っていた。

真っ白な翼を持った狛犬が、走って来るミタマへと視線を向ける。


「神鳩(かみばと)!頼みがあるんだ」

「話は、聞いて、おるぞ。ラチ、された、と。頼み、とは、なんだー?」


どこか片言で、少し間延びした声音でそう問い返され、ミタマは深く頭を下げた。


「少しばかりでいい。この近くを飛んで紗紀の……気配を見つけて欲しい」


ミタマの懇願こんがん神鳩かみばとはこてんと小首をかしげて、マジマジとミタマを見下ろす。

それはどこか困り顔だ。


「そう、言われても、だなぁ。……その、サキ?の、気配が、分からんぞー?」


ごもっともな答えだった。

ミタマは顔を上げると自分の胸に手を当てた。


「この俺の妖力と同じ気配だよ。頼む」

「……ふむむ。ナルホド、ナルホドー。承った」


そう言うとバサリとその純白の翼を広げて、神鳩かみばとは空へと向かう。

そこで楓も御札おふだを取り出して変化をすると、同じように空高く舞った。

ミタマは願う。


(どうか、どうか見つかってくれ)


心から強く。

強く。


けれど、紗紀は見つからず、楓達は再び神社へと舞い戻った。

楓はただ首を横に振る。


「無理を言って、すまなかった……」


分かってはいたのだ。

空を飛んだからといって見つかるはずなんか無いと。

肩を落とすミタマを見て、楓は視線を逸した。

“大丈夫”だなんて確証のない言葉を気軽に口にする事は出来ない。


「ウカノミタマ様の元へ案内するよ」


そう、ぽつりと呟いて、ミタマは来た道を戻って行った。

楓と神鳩かみばとも彼の後を追う。


◇◆◇


「ほう。其方そなたが紗紀と同じ……」

「秋山楓です。お世話になります」


ペコリと頭を下げる。

神鳩かみばとはその場にひざまずいた。


「して、其方そなた三宅八幡宮みやけはちまんぐうの神使か」

神鳩かみばとと、申しまする」


ウカノミタマはふむと、楓をマジマジと見る。

「これまた若いな。面をあげよ。話は聞き及んでおる。ちと近う寄れ」


楓は言われるがままに、ウカノミタマの前へと進んだ。

すると、額に口づけを落とされた。


「なッ……!?」


免疫の無い楓が肩を跳ね上げる。

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