232 / 368
第十五話:拉致。
25拉致。
しおりを挟む「ん、まぁそうねぇ。一羽でも多く力が必要っていうなら、貸してあげないこともないわよ」
「ほぉ?どの口がほざいてやがんだ?あ?なんで上からなんだよテメェ!」
「うるっさいわねぇ!アンタなんかと口を聞いてんじゃないわよ!自惚れないでくれる!?」
胸倉を掴み合う二羽。
一触即発な雰囲気に、本当に彼を連れて行っても大丈夫なのか不安になる。
「だいたい何よアンタ!髪型も服装も派手に変わってるじゃない?お洒落さんのつもりなの?あらそうなの?」
「春秋!」
我慢ならないと言いたげに白狼が声をあげた。
「なぁに?」
「なぁに?じゃねーよ!こんなヤツ必要ねェ!統率が取れなくて逆に足手まといだろ!」
「んまぁ!失礼しちゃうわ!アタシみたいに残虐無慈悲な方が戦場では情に絆されなくて使えるのよ!アンタなんかとは大違い!キ――――ッ!」
それは褒めているのだろうか、貶しているのだろうか。
紗紀が春秋へ視線を向けるが、彼は相変わらず満面の笑顔だ。
「今回、僕らのした事を冷静に考えてみようか」
春秋が言葉を口にすると、掴み合いをしていた二羽が春秋に視線を送る。
そして各々自分たちがしでかした事を思い出して目を逸らした。
「ご理解頂けたようで。そこで、交渉前に相手方の怒りが治まらなかった場合は……」
そこで敢えて言葉を一旦区切る春秋。
ゴクリと喉が鳴った。
「治まらなかった場合は?」
「残虐無慈悲に鞍馬を切腹させます」
(残虐無慈悲!!)
なんて笑顔で恐ろしいことを口にするのだろう。
紗紀の中の春秋に対する信頼が薄れつつある。
本当に彼を連れ、みんなに会わせて大丈夫なのか不安しかない。
「賛成!」
白狼は意気揚々と挙手して賛成の意を表す。
「春秋様ぁあああああ!!」
「君、言ったよね?処罰は甘んじて受けます。って」
悲痛の声をあげる鞍馬に、笑みを絶やさずに春秋は彼が誓ったであろう言葉を繰り返した。
鞍馬はその口を閉ざして青ざめる。
「さぁ、静かになった事だし。出発するよ。忘れ物は無いかな?あ、白狼、手土産」
「あ。ちょっと取って来る!」
白狼が急ぎ足でその場を去って行った。
正直こんなメンバーの中置いていかないでほしい。
そう思う程に、紗紀の中の白狼に対する株は上がっていた。
「あ、そうだ。君にこれをプレゼントしておこうかな」
春秋は懐から何かを取り出すと、紗紀の手のひらにそれを乗せる。
「……勾玉?」
「うん。これはね、僕が念を込めて削って作ったんです。きっと何かの役に立ちますよ」
「……いいんですか?そんな大事なもの……」
春秋さんはにっこりと優しく微笑んで見せた。
「怖い目に合わせてしまったお詫びです。こんなモノでは償いきれませんけど。ね。とりあえず、彼女に謝罪はしてよ。僕に謝ったってどうしようもないのは理解出来たよね?」
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
完結【R―18】様々な情事 短編集
秋刀魚妹子
恋愛
本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。
タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。
好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。
基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。
同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。
※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。
※ 更新は不定期です。
それでは、楽しんで頂けたら幸いです。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる