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第十五話:拉致。

25拉致。

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「ん、まぁそうねぇ。一羽でも多く力が必要っていうなら、貸してあげないこともないわよ」

「ほぉ?どの口がほざいてやがんだ?あ?なんで上からなんだよテメェ!」

「うるっさいわねぇ!アンタなんかと口を聞いてんじゃないわよ!自惚うぬぼれないでくれる!?」


胸倉を掴み合う二羽。

一触即発な雰囲気に、本当に彼を連れて行っても大丈夫なのか不安になる。


「だいたい何よアンタ!髪型も服装も派手に変わってるじゃない?お洒落さんのつもりなの?あらそうなの?」

「春秋!」


我慢ならないと言いたげに白狼が声をあげた。


「なぁに?」

「なぁに?じゃねーよ!こんなヤツ必要ねェ!統率とうそつが取れなくて逆に足手まといだろ!」

「んまぁ!失礼しちゃうわ!アタシみたいに残虐無慈悲な方が戦場では情にほだされなくて使えるのよ!アンタなんかとは大違い!キ――――ッ!」


それは褒めているのだろうか、けなしているのだろうか。

紗紀が春秋へ視線を向けるが、彼は相変わらず満面の笑顔だ。


「今回、僕らのした事を冷静に考えてみようか」


春秋が言葉を口にすると、掴み合いをしていた二羽が春秋に視線を送る。

そして各々自分たちがしでかした事を思い出して目をらした。


「ご理解頂けたようで。そこで、交渉前に相手方の怒りが治まらなかった場合は……」


そこで敢えて言葉を一旦区切る春秋。

ゴクリと喉が鳴った。


「治まらなかった場合は?」

「残虐無慈悲に鞍馬を切腹させます」


(残虐無慈悲!!)


なんて笑顔で恐ろしいことを口にするのだろう。

紗紀の中の春秋に対する信頼が薄れつつある。

本当に彼を連れ、みんなに会わせて大丈夫なのか不安しかない。


「賛成!」


白狼は意気揚々と挙手して賛成の意を表す。


「春秋様ぁあああああ!!」

「君、言ったよね?処罰は甘んじて受けます。って」


悲痛の声をあげる鞍馬に、笑みを絶やさずに春秋は彼が誓ったであろう言葉を繰り返した。

鞍馬はその口を閉ざして青ざめる。


「さぁ、静かになった事だし。出発するよ。忘れ物は無いかな?あ、白狼、手土産」

「あ。ちょっと取って来る!」


白狼が急ぎ足でその場を去って行った。

正直こんなメンバーの中置いていかないでほしい。

そう思う程に、紗紀の中の白狼に対する株は上がっていた。


「あ、そうだ。君にこれをプレゼントしておこうかな」


春秋は懐から何かを取り出すと、紗紀の手のひらにそれを乗せる。


「……勾玉?」

「うん。これはね、僕が念を込めて削って作ったんです。きっと何かの役に立ちますよ」

「……いいんですか?そんな大事なもの……」


春秋さんはにっこりと優しく微笑んで見せた。


「怖い目に合わせてしまったお詫びです。こんなモノでは償いきれませんけど。ね。とりあえず、彼女に謝罪はしてよ。僕に謝ったってどうしようもないのは理解出来たよね?」


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