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第十五話:拉致。
22拉致。
しおりを挟む確かに今から筋力トレーニングを一から初めたんじゃ手遅れだろう。
思い悩む紗紀の両脇に、白狼は手を差し入れるとグッと彼女の体を持ち上げた。
「うっわぁ!な、何するの!ちょっと!」
思わず手を伸ばして白狼の肩を掴む。
「オイバカ!手を離せ!」
「なんで!?」
「これから空高くぶん投げるから、飛べ」
「雑!!」
「ほれ行くぞ!飛べ!」
一回低く下がったかと思えば、一気にグンと空高く放られた。
(本当に投げた!!)
未だかつてこんな高さにまで投げられた事があっただろうか。
いや、無い。
子どもですらこんな高さにまでぶん投げられたりしないだろう。
それほどまでに空高々と投げられた。
「ひぇっ!」
「オイ!翼を広げろ!」
下から大声で叫ばれる。
紗紀は思い出したように翼に意識を集中させた。
言われた通りに広げるだけ広げてみる。
風の抵抗が強くて思うように広がらない。
地面が近くなって目を閉じれば、がっちり掴まれた感覚がした。
「翼広げろって言ったろ!ほらもっぺん飛んで来い!」
「うぇええええええええ!!」
息つく暇も無く空高く放られた。
鬼コーチと叫びたい。
紗紀が飛べるようになるまで永遠に続くんじゃないかとさえ思われた。
あれから数度目で、なんとか翼を広げる事に成功した。
それは随分地上に近づいてからの出来事で、翼が綺麗に広がった頃には低空飛行で数秒後には足が地面についた。
地面についたはいいが、翼が広がって風を切ってるために、足がもつれて地面に転がる。
「オイオイ。鈍臭いヤツだな」
白狼は紗紀を抱き上げると、膝についた汚れをはたき落としてくれた。
紗紀も上半身についた汚れをはたく。
「まぁ、なんだ。とりあえず、翼は広がった。ウン。順調じゃね?」
すっごく気を使われているのが痛いほど伝わって来る。
あの無神経な彼が気を使うのだからよっぽどの事である。
「さて。次の策を練ってみた。……続けるか?」
案はあるものの、人間である紗紀の体力的な面をふと思い出して、念の為に伺いを立てる白狼。
我慢強く、思いの外自分に対して負けん気の強い紗紀がここで折れると誰が思うだろう。
「続けてください」
紗紀の真剣な表情に、白狼は面白いモノでも見るように口元を緩めた。
「よし、やるか!じゃあ、両手上げろ。ほらバンザーイ」
「ば、ばんざーい?」
言われた通りに両手を上げるものの、意図が掴めずに首を捻る。
白狼はすかさずその両脇を掴んだ。
「えっ!また!?」
投げられる、そう思い目を固く閉じた。
けれど、風を切っているのに両脇にある腕は離れてはいない。
「あ、れ……?」
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