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第十五話:拉致。
17拉致。
しおりを挟む「いやいやそこまでは!!」
「でも割と存外な扱いだよ?縛られてたんだよ?もっと怒ってもいいレベル」
紗紀が慌ててフォローに回るけれど、思い出せば出すほど犯罪臭しかしない。
「……俺が悪かった」
まさかの白狼の謝罪に、二人は驚いて顔を上げる。
「あの白狼が……」
「あの謝るって言葉を知らないような白狼が……」
「オマエらの俺様に対する認識はよーく分かった。もう口開くな」
どうして普段謝罪をしない相手が謝って来るとこうも感動してしまうのだろう。
親心のような気持ちで見つめて来る二人に、嫌気がさした白狼は早々に蹴破った障子戸を手に出入り口へと歩いて行く。
「手作りで良ければまんじゅうは作ったぜ?アレでも持ってけ」
「え、何言ってるの?君も一緒に来るんだよ。君が犯した犯罪なんだから僕に押し付けないでくれる?」
「あ、ハイ」
瞳孔まで開いてるんじゃないかと言わんばかりの真顔でそう春秋に言われ、さすがの白狼も怯んだ。
大人しく障子戸を戻すと、そのまま出て行ってしまった。
「……白狼、おまんじゅうとか作れるんですね」
「あの子本当器用なんですよー。最近はケーキ作りにハマってたんですけど。政府に行ったり、君達のとこ行ったりで……好きなことさせてあげられなくて可哀想な事しました」
「……なんで白狼だったんですか?」
白狼を憂いて目を伏せる春秋に密かな疑問を口にする。
「あー。あんな性格ですもんね。ハッキリ言って交渉には向いてないですし」
あはは、と困り顔で笑う春秋に、本当にその通りだと紗紀も思う。
春秋は一通り笑うと紗紀を見つめた。
「でも、君は白狼のこと、理解してくれたんですよね?アイツは言葉は鋭いし、人は見下すし、意地悪も言うけど……まっすぐなんです」
「……はい」
白狼の言葉はいつだって痛いほどに正論だったと思う。
「もっと言い方変えれば世界がガラッと変わりそうなのに。不器用さんなんですよ」
「本当に。私もそう思います」
紗紀も春秋の言葉に小さく笑った。
「じゃあ、怪我を治させてね。少し触れるけど、平気?」
気遣うように、触れる前に質問する彼に、紗紀は頷く。
「大丈夫です。よろしくお願いします」
「ありがとう。少し失礼するよ」
そう言って片手で紗紀の傷口に触れると、春秋は目を閉じた。
聞き取りづらい小さな声で、ぼそぼそと何かを呟いている。
すると、室内で風が吹くはずもないのに、春秋の髪や服が揺れた。
青白い光が春秋の中心から流れるように、春秋の腕を伝って紗紀の首筋へ届けられた。
それはなんとも不思議な心地だ。
春秋は先程の話を治癒させながら小さく続けた。
「それに、アイツが一番信用出来たんです。人間のことまで心配してくれる。優しい子」
確かに、先程会った天狗達を思うとなぜ白狼が選ばれたのかは一目瞭然に思えた。
「妖怪って、人間にとっては驚異で、恐ろしい存在だって思ってました」
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