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第十五話:拉致。

08拉致。

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『お前ら神使は俺らと会うまで政府側で暮らしてたんだろ?何か思い当たる事ないわけ?違和感とか』


楓の問いかけに、ミタマはあの日々を思い返した。

ウカノミタマ様に任せられて、神社を出たあの日の事を。


「俺たちはキミ達が来るまでの間、それぞれ部屋をあてがわれていて、外との接触は一切無かったんだ。だから詳しい事までは。相方になるヒトが身寄りのない者である事くらいしか……」

『はぁ。神使しんしのクセに疑うって言葉を知らないのかよ』


なんて無礼な物言いだろう。

けれど今となっては返す言葉も見当たらない。


『木葉天狗にさらわれたなら、そっちが怪しいな。……とにかく神様と話をさせて欲しい。俺が相手じゃどうしようもないだろうから、こっちも神様と代わる』

「分かった。少し待っていてくれ」


◇◆◇


逢魔時を迎える頃、紗紀は高台にある古風な家へと連れて来られて居た。

だだっ広い平家に、豪勢な庭付き。

そんな広い一室に連れて行かれて、畳の上へと降ろされた。


「ふーい。ご到ちゃーく。ハハッ!この間の俺様みてーだな。まるで」

紗紀は白狼を睨みつける。

白狼はどこか愉快そうに笑ってみせた。


「そう怒んなって!だってオマエ普通じゃ話しすらまともに聞かないだろ?さっきだって札を使う気満々だったし」


確かにその通りだ。

むしろあんな登場の仕方されたら誰だって攻撃体制を取るに決まっている。

まず普通に入って来てから言って欲しい。

白狼は尚も言葉を続ける。


「……つーか、あんな広い部屋にオマエ独りぼっちとか結局アイツは神を選ぶわけだ?」


白狼はニヤリと意地悪な笑みを浮かべた。

けれど、紗紀は昨夜のミタマを知っている。

その点に関してはミタマを信頼しているし、ウカノやウカノミタマからもミタマの事を頼まれている現状だ。

白狼の悪意ある言葉なんて痛くもかゆくもない。

そんな事より、ここからどう抜け出すかばかりが頭を巡る。


「おいムシかよ。まぁいいけど。……アイツはオマエの事信頼してると思うぜ。気にすんなよ~」


白狼は紗紀の頭を撫でると猿轡さるぐつわを外しにかかる。

紗紀はこの妖怪はなんなんだと不信に思った。

意地悪を言ったかと思えば、そんな励ますような言葉をくれる。

なかなか外れない猿轡さるぐつわに悪戦苦闘していると、障子戸が開いた。


「お邪魔しますよー。ご苦労様……って。んんん!?待って待って。え、何してるの?」


現れた見知らぬ男が、紗紀と白狼を交互に見て状況が掴めず目を白黒させる。

白狼はあちゃーと言いながら誤魔化すように笑ってみせた。


「あーあー、春秋?誤解だ。落ち着いて話し合おうぜ?」

「いやいやいや、落ち着けないでしょ!コレ。犯罪ですって。この連れて来かたはどう考えたって普通にアウトだから!」

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