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第十五話:拉致。

04拉致。

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「……言い出したら聞かないの、知っているだろう?ウカノが飲んでくれても良かったのに。お酒強いじゃないか」

「うっふふ。兄様の勇姿をしかとこの目に焼き付けたくて」


たのしげに笑うウカノのアタマに手を乗せて、ミタマは深い溜め息を吐き出す。

ふとウカノは思い出したように辺りをキョロキョロと見渡した。


「……そういえば。彼女……紗紀ちゃんは?」

「……ああ。休んでいるよ。通常は朝焼けが出るまで待機だからね。だいたい起きるのは昼過ぎだよ」

「あら、そうだったの。妖達は逢魔時から夜中に活動するものね」


ウカノは頬に手を当てるとふぅ、と深い溜め息を吐き出す。

そこでやっとミタマは本題へと移った。


「それで、昨夜は妖は?」

「こちらは特には。何とも無かったわ」

「そうかい」


ウカノの答えに、ほっと安堵する。

寝てる間にウカノミタマのみに戦闘をさせたとあらば、狛犬として護っている意味が無くなってしまう。


「うっふふ。その様子だと兄様。昨夜はぐっすりと?」

ウカノはクスクス愉しげに笑って、コップに水を注いで手渡した。

ミタマはその水を受け取ると気まずげに目をらす。


「はぁ。だから酒は好かないんだ」


そう言ってぐいっと一気に飲み干した。

ウカノは何か言いたげにニコニコしている。

それを察したミタマはウカノにコップを返すと、そそくさと台所から出て行こうとした。

けれどグッとウカノに袖を握りしめられる。


「……なんだい?」

「その様子じゃ紗紀ちゃんと何かあったのね?兄様」

「……」


服の袖を掴むウカノごと、引きずるようにジリジリ歩を進める。

口を固く閉じれば、パッと急に手を離されて前のめりに転びそうになった。


「兄様は重たいし、鬱陶うっとおしいから気を付けないと。面倒だって思われて捨てられてしまうわよ?」


一つ一つの単語を強調しながら、ウカノは頬に手を当てて呆れたように言い伏せる。

ぐうの音も出なかった。

思い当たる節しかなくて、矢のごとく言葉が突き刺さる。


「ほら、紗紀ちゃんはまだ若いから。今は目先の事、者にしか集中出来ないけれど、大きくなるにつれて視野が広がれば籠の鳥になんかなってはくれないわよ」

「……分かっている。分かっているよ。……ありがとう」


振り返ったミタマはうれいをびた表情で、口元だけに笑みを浮かべていた。

そうして部屋を出て行く彼に、ウカノは言い過ぎただろうかと心配になる。

ミタマは求め過ぎる節があるのをウカノは知っている。

それでいて悲しいほどに心が弱い事も。
 

◇◆◇


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