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第十四話:ウカノミタマ。
19ウカノミタマ。
しおりを挟むすうと息を吸って言葉を選んだ。
「私……サグジさんの気持ちを考えていなかったです。どんな気持ちでいたのか、サグジさんはあんなにも伝えてくれていたのに。私はたくさんサグジさんから安心と自信を貰ってばかりで、全然返せてなかったです」
一生懸命言葉を紡げば、ミタマを抱きしめている手を剥がされた。
一瞬不安と恐怖に駆られる。
けれど振り返ったミタマはどこか泣きそうな顔をしていた。
「サグジさん、私……。サグジさんを不安にさせないように気をつけます、だから……」
「……ごめん」
ミタマの口から溢れた謝罪に、時が止まった気がした。
ドクリと妙に心臓が跳ねた。
「……分かってはいるんだよ。どうしようも無かった事だって。きっと紗紀には抗えない事もあって、どうしようも無かったんだろうって」
そう、思いたい。
そうであってほしいと。
勝手な願い。
(キミは誰にだって優しいから……)
「けれど白狼と接するキミは、俺の時よりも砕けた話し方をするのを知ってる。七曲に好かれている事も、九重には信頼し切っているのを感じてる」
「……サグジ、さん……」
どう言葉を返すのが正解なのか分からなかった。
どれを取っても言い訳にしか聞こえない気がして言葉に詰まる。
「……私。それでも、そう見えたとしても、私は……!私の一番はサグジさんだけです。……サグジさんは知ってるでしょう?私の両親の話。私は、あんな人達と同じような事は決してしない。誰でもいいわけじゃ無いんです。だから、優一さんを……選べなかった……」
ミタマに握られた手が震えた。
涙が出そうになって必死に堪える。
泣くのは卑怯だ。
そう自分に言い聞かせた。
ミタマの瞳が左右に揺らぐ。
紗紀の言葉が信頼出来る物で心が満たされていくのを感じた。
確信出来る確かな物。
気付けば両手を伸ばして紗紀を抱きしめていた。
その折れそうな細い体を、自分より冷えているのかどこか冷たい体をぎゅっと力一杯抱きしめる。
紗紀は余りに急な出来事に息が止まるかと思った。
けれど、理解して貰えたような気がしてほっと安堵する。
ミタマは紗紀をぎゅうぎゅうに抱きしめたままおねだりをした。
「……ねぇ、紗紀。紗紀から口付けをして」
今まで未遂を含めて何度か紗紀から接吻をする事はあったけれど、ミタマからそう催促されると一瞬頭が真っ白になって固まってしまう。
そうしたかと思えばじわじわと耳まで赤くなるのを感じた。
けれど恥ずかしがってる場合ではない。
紗紀は意を決して、ミタマの服をぎゅっと握りしめ彼に口付けをした。
触れるだけの口付けをして離れればミタマが不満そうに口を開く。
「足りないよ。……もっと」
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