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第十四話:ウカノミタマ。

18ウカノミタマ。

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「この世界に紗紀と俺だけだったら良かったのに。そうしたらこんな不安にられなくて済んだ」

「……サグジさん。本当はそんな事、思って無いですよね?だってサグジさん、他の皆さんと話してる時も楽しそうじゃないですか」


紗紀の目には確かに最初とは違って慣れ親しんで会話をするミタマとみんなの姿が鮮明に映っていた。


(本心じゃない。そう、ただ不安なんだ。それだけのはず……)


「それが偽りだと言ったらどうする?」

「……え?」

「キミがみんなを受け入れているから、キミに嫌われない為の演技だと言ったら……?キミは俺を最低だと罵って嫌いになるかい?」

「サグジ、さん?」


一瞬何を言われたのか飲み込めなかった。


「キミさえ生き残ってくれれば他の誰が死んでも構わない」

「サグジさん!……聞きたくない。聞きたくないです!!……そんな事、言わないで……」


嬉しいよりも悲しい。

彼にここまで口にさせてしまったのには、きっと自分の行動に責任があったに違いない。

それ程までに不安がらせていたのだと思うと胸が痛んだ。


「ほら、そうやってまた……キミは他の者ばかり」


ミタマは体を起こすと紗紀に背を向ける。

どんなに望んでも渇望しても同じだけの熱量では返って来やしない。

ずっと一方通行で自分ばかりが翻弄ほんろうされているんじゃないかと思えてしまう。


「違います。現に今だってサグジさんの事ばかり考えてますよ。……どうしたら伝わりますか?」


紗紀も体を起こしてその背に問う。

答えは返って来なかった。

紗紀は思い返す。

確かにミタマは自分を優先に常に傍に居て護ってくれていた。

直ぐに駆けつけてくれた。気を遣ってくれた。

欲しい言葉をたくさんくれた。

言葉だけじゃない。

愛情をこれでもかって程に注いで大切にしてくれていた。

自分はどうだろうか。

確かに自分なりに思い付く限りには行動にも言葉にもして来たつもりだ。

それがミタマからしてみたら全然足りなかったのかもしれない。

それ以上に自分の行動で不安をあおる事の方が多かったのかもしれない。

何度も何度もミタマから発せられていたじゃないか。

ヤキモチを妬いている、と。

嬉しく思うだけでどれだけ気を遣ってあげられていただろうか。

逆の立場ならやっぱり面白くないに決まってる。

紗紀はミタマに近づくとその大きいのにどこか寂しげで、哀愁漂あいしゅうただう背にそっと触れた。

まだ熱をはらんでいるのが分かる。

小さくピクリとミタマの体が震えた気がした。

その背に額を当てて、後ろからぎゅーっと両手で包み込むように抱きしめた。


「……ごめん、なさい」


ぽつり、紗紀は呟く。

静かな室内。

開け放たれた障子の向こう側。

庭の先で虫の音が聞こえる。

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