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第十四話:ウカノミタマ。
15ウカノミタマ。
しおりを挟む「そうであったか。アヤツは自分が劣ると、弱いと思い込んでいる。だが、物から生まれたとは言え、神に使える妖だ。弱いはずがない。進化をすれば九尾狐にだって遜色ない」
(進化……?)
紗紀は七曲が自分の血を飲んで姿を変えた事を思い出していた。
「アヤツに自信をつけさせてやってくれ」
それはウカノミタマが見せた親心だった。いつだってミタマはどこか自分を卑下する癖があったように思う。
そんな彼は神社内から離れ、普段なら出会えなかっただろう妖怪達と出会い、向き合い、少しずつ変わって来たように感じる。
「ミタマの選んだ相手が其方で良かった。よろしく頼む。紗紀」
すっと、唇が紗紀の額に触れた。
何事も無かったかのようにウカノミタマは酒を盃に注ぐ。
ゴトンと何か物が落ちる音がして、視線をそちらへと向ければ、三味線を落としたミタマと目が合った。
「ウカノミタマ、様?」
ミタマが恐る恐るウカノミタマの名を呼ぶ。
ウカノミタマは目を合わせることをせず、酒をまた口にした。
「なんだ?誰が止めていいと言った?はよ、続きをせんか」
「は、はい……」
結局ウカノミタマには勝てず、睨まれれば渋々続けるしかない。
再び三味線が音色を奏で、ウカノが舞う。
ウカノミタマが紗紀を見て、意味深に苦笑を漏らした。
まるで『な?嫉妬深いであろう?』と言いたげだ。むしろ脳裏に響いてくる。
紗紀は思わず小さく笑った。
ウカノミタマがどれ程愛情深い神なのか、紗紀には良く伝わって来た。
このように素敵な神だからこそ、ミタマが惚れ込むのも納得だと紗紀は思った。
それが憧れだと言うのも頷ける。
◇◆◇
ひとしきり楽しんだ後、宴はミタマが酔い潰されて終わりを告げた。
ミタマがダウンしなければ朝まで続いていたかもしれないと思うとヒヤヒヤものだ。
足元がおぼつかないミタマを支えて部屋まで歩く。
あの三味線の後からものの数分で潰されてしまった。
ウカノミタマは一人で飲みたいからと好きなだけ食べたら下がるように命じ、長居するわけにもいかずにこうして紗紀がミタマを連れて歩く事となったのだ。
「……紗紀」
「はい?……大丈夫ですか?」
「……うん」
(寝言かな?)
紗紀は徐々に体力が限界に来て息が上がり始める。
思いのほか体重をかけて来るものだから、正直言って重い。
まだ自分の足で歩いてくれているだけマシだと言うべきか。
何とか部屋に辿り着くけれど、敷かれてあるとは思いもしない布団に足を取られて転んでしまった。
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