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第十四話:ウカノミタマ。
12ウカノミタマ。
しおりを挟む「ウカノミタマ様」
ミタマが普段より低く怒気の孕んだ声で名前を呼んだ。
「私は、ウカノミタマ様とお話がしたいです」
紗紀はまだまともに会話をしてもいない内から逃げたくないと思った。
嫌われていると目に見えて分かるのに、ここから逃げ出すわけにはいかない。
(ミタマさんと生きていくって決めたんだから……)
どんなに過酷な道だろうと、二人で共に在る為に、説得するのだと心に決めていた。
そんな紗紀とミタマを見て、ウカノミタマは一瞬目を丸くすると、まるで面白いものでも見るようにクスクスと笑い出した。
「そう怒るでない。妾とて草紙に描かれた物語のように小姑なる者をやってみたいではないか」
まさかの発言に一同呆けてウカノミタマを見た。
(それはつまり……)
「フフッ。嫌ってはおらんよ紗紀。怖がらせてすまなかった。其方の人柄を見てみたかったのだ」
紗紀の目を見て、柔らかく笑うウカノミタマに、紗紀はやっと息が吸えるような気がした。
「……して、先に先手を取って好いたのはどちらだ?」
突然振られた話題に紗紀とミタマは顔を見合わせ赤面する。
お茶でも飲もうものなら確実に吹き出していたに違いない。
(ういのう……。あのサグジがあのような顔を見せるとは、な)
ウカノミタマ二人を眺めながら楽しそうに箸を手にした。
「……ミタマよ、楽しませておくれ。事と成り行きを。その間に紗紀と妾が食事を堪能する」
(堪能出来ません!!)
心中で騒ぐも声には出せない。
思い返せば返す程あれやこれやと恥ずかしい事ばかり脳裏を過って思わず蹲る。
「どうした紗紀。腹でも痛いのか?」
「紗紀?」
紗紀の行動にウカノミタマは動揺の色をみせた。
ミタマも心配そうに紗紀を見る。
けれど紗紀はその耳まで真っ赤に染まった顔を上げてまた俯いた。
「恥ずかしさに戸惑っております」
「くっ、ハハッ!……そうかそうか。ウカノ!酒だ。酒を持って来ておくれ」
「畏まりました」
ウカノミタマは腹の底から笑い声を上げると、何かを思い立ちウカノを呼びつける。
ウカノが酒を取りに行く間に慌ててミタマがウカノミタマへと声をかけた。
このままではまずいとミタマは思った。
ウカノミタマはザルだ。
そして誰それに酒を飲ませたがる。
先手を打たねばと思った。
「ウカノミタマ様。紗紀はまだお酒を飲んでいいとされる歳ではないそうですよ」
「なに、そんなに若い娘をたぶらかしたのか其方は」
「たぶ……、言葉を選んでください」
まさかのウカノミタマの発言に言葉にならなくてたしなめる。
「だいたい、最近は異常な妖達が神社を狙っているというのに悠長にお酒など飲んで何かあったら目も当てられませんよ!」
「何かあれば妾一人で充分だろう?其方はぐっすり寝ていろ」
そう子供のような扱いをされると面白くない。
寝てなんか居られるわけが無いというのに。
そうこうしてる間にもウカノがお酒を持って戻って来てしまった。
「ウカノミタマ様、どうぞ」
「すまぬな」
着いてそうそうお酒を開けて盃に注ぐウカノ。
ウカノミタマは満足そうに笑って注ぎ終わった酒を手に取った。
「さて、妾の酒が飲めんとは言わんな?」
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