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第十四話:ウカノミタマ。
08ウカノミタマ。
しおりを挟む「兄様、この方と……その恋仲なのですか?」
口元に袖先を当てて小首を傾げるその姿はミタマそっくりだ。
ミタマはそんな妹の頭を撫でると嬉しそうに笑って見せた。
「ああ。仲良くしてやってくれるかい?」
ミタマにそう言われてちらりとウカノは紗紀を見る。
紗紀は丁寧に頭を下げた。
「紗紀と言います。よろしくお願いします」
「わたしはウカノ。こちらこそ、よろしくお願いします」
ウカノは紗紀の手を両手で握り握手を交わす。
どこかおっとりとしているけれど優しい女性に見て取れた。
紗紀はホッと安堵の息を吐く。
「でも兄様?兄様はその……ウカノミタマ様をお好きなんじゃ……。何度も求婚して断られてましたよね?」
最後の言葉がグサリとミタマに突き刺さる。
(ああ、本当に……)
ミタマがウカノミタマを好いていた事は本人の口から何度も聞いている。
けれどこうして目の当たりにしてしまうと、自分に対して自信の無い紗紀は本当にこの手を握っていていいのか思い悩んでしまう。
それ程にとても綺麗で自分とは比べものにならない魅力がウカノミタマにはあった。
それは神様なのだから当たり前と言えば当たり前だ。
「ウカノ。俺はね、気付いてしまったんだよ。ウカノミタマ様に対する気持ちは恋心では無く憧れだったと……」
「やっとですか」
さらりと言われた言葉にミタマと紗紀は拍子抜けする。
「そうじゃないかと思ってましたよ。ずっと気付かないんじゃって心配で心配で。でも……こんな若くて可愛らしい方、良いのかしら」
ウカノが紗紀の頭を撫でながら心配そうにそう口にした。
するりと撫でた手が紗紀の髪を耳にかける。
そしてそっと紗紀の頬に触れると、そのまま口づけを落とした。
「うえぇええっ!?」
目を瞬かせて動揺する紗紀。
ちらりとウカノはミタマを見ると、また袖口を口元に寄せてクスリと可笑しそうに笑って見せた。
「妹にまでヤキモチを妬くだなんて、心の狭い男」
「……はぁ、うるさいよ。キミは何がしたいんだい?紗紀が驚いているだろう?」
繋いでいた手を引っ張って反対側の手で握り直すと、ミタマは紗紀の腰に腕を回して傍に寄せる。
ウカノはそんなミタマの様子を見て満足げだ。
「安心したかっただけですよ。それに、兄様がよろしくするよう仰ったのでしょう?」
「言ったけれども!もっと普通の……友人関係で居てくれ頼むから」
そんな兄妹のやり取りを見て、紗紀も思わず笑ってしまう。
本当に仲睦まじい。
羨ましいくらいだ。
「分かってるわ。それでは、お部屋を案内しますね。どうぞこちらへ」
ウカノに着いて行くと案内されたのは、いつも紗紀が使っている寝室だった。
見知った場所に安心する。
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