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第十四話:ウカノミタマ。
06ウカノミタマ。
しおりを挟む「なるほどねぇ。つまりボクらはお留守番って事になるんだね?」
「優一を一人ここに残すわけにもいかんしのう」
何かを思うように腕組して立つ七曲に、左頬に手を添えて困り顔で溜め息を吐く雪音。
確かに雪音の言う通りだ。
優一だけをここに残していくなんて薄情にも程がある。
「戦いを終えたら必ず、またここへ戻って来ます。だから……」
「ああ。ここは任せるといい」
紗紀が必死に言葉を選んでいると、九重が頷いて見せた。
その姿にホッと安堵する。
未だどこか呆然としているミタマの肩を、紗紀が叩いた。
ふと我にかえったミタマがみんなを見やる。
「ここを頼んだよ。……夜が更けたら行こうか、紗紀」
「夜、ですか?」
「うん。夜、遅い時間なら宮司も巫女も帰宅しているだろうし」
ミタマはどこか気まずげにそう話した。
それに紗紀もなんとなく察しがつく。
「私達七名の事って、宮司さん達は知らないんですね」
「……うん」
夜な夜な忍び込む事になるとは思いもしなかった。
普通に考えて、こんな事態を知られれば騒ぎになる事間違いないだろう。
◇◆◇
「気をつけるんじゃよ」
「ありがとうございます」
日も暮れて、みんなに見送られながら、紗紀とミタマは転移装置で本来の神社へと向かった。
着いた場所は先程いた神社と一寸の狂いもない。
紗紀は唖然と立ち尽くし、もう見慣れきったその真っ赤な拝殿を見上げる。
フェイクの神社は本来の神社の写し身そのものだった。
真っ赤な鳥居が立ち並び、それと同じ真っ赤で立派な建物。
紗紀はミタマの服の袖をギュッと掴む。
ついにこの時が来たのだ。
(本来の主であるウカノミタマ様と会う日が来るなんて……)
ミタマは紗紀の緊張が伝わったのか、裾を握る紗紀の手を剥がすとギュッと手を握った。
「……行こう。大丈夫だよ、紗紀」
「はい」
すっと息を吸う。
その空気はフェイクの神社よりもより澄んでいて、濃度が濃く感じた。
ドクドクと心臓が弾んでいるのが分かる。
けれどこの手の温もりがあれば、きっと大丈夫だ。
紗紀はギュッと力を込めてミタマの手を握り返す。
二人で歩いて向かう。
その先はいつも見慣れた休憩所だ。
開く玄関から顔を覗かせたのは、ミタマに良く似た顔をした、女性だった。
「ただいま、ウカノ」
「兄、様?」
「うん。帰ったよ」
兄と呼ぶその少女は目を見開くと、口元を手で覆い泣きそうな顔をする。
そして思い出したように中へバタバタと走って行き大きな声で呼んだ。
「ウカノミタマ様!ウカノミタマ様ー!兄様が!!」
声が反射してしっかりとそう聞き取れる。
紗紀はミタマを見上げた。
「兄、様?」
「妹なんだよ。ほら、狛犬は対になって座って居るだろう?番いの者も居れば兄妹も居る」
「そう、なんですね。とってもそっくりでビックリしました……」
紗紀の反応にミタマはクスリと笑う。
しばらくして、玄関から現れたのは神と呼ばれるにふさわしい雰囲気と威厳。
そして思わず息を飲むような美貌を兼ね揃えた女性だった。
ミタマがその場に跪き頭を下げる。
紗紀もされに習ってその場に跪いた。
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