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第十四話:ウカノミタマ。

04ウカノミタマ。

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「紗紀が言った通りそこまで理解してるなら問題無いよ。内鍵を付けておく必要がありそうだね」

「……本当に、そうですね」


大きな溜め息が思わずあふれてしまった。

紗紀はゆっくりと手を降ろす。

ミタマは紗紀の肩に手を置くとそっと当てるだけの口付けをした。


「大丈夫かい?知らぬ間に起きた出来事だから尚の事気持ち悪いだろう?」

「……そうですね。とても」


ミタマはふと過去の事を思い出して思わず近くの柱に頭突きを食らわす。


「えっ!?ちょっ、ミタマさんっ!?」


混乱する紗紀をよそに、額を手で押さえながら過去の自分に対する特大ブーメランを自らぶん投げた事に落ち込んだ。

以前、自分自身も紗紀が意識の無い間に懐から御札を取り出して、自分の御札おふだに名前が書かれていないか確認した事を思い出していた。


「……もう、急にどうしたんですか。ビックリしたー」

「自己嫌悪中だよ。一発殴ってくれてもいいよ紗紀」

「殴りませんよ。だいたい、ミタマさんだって、私が頬をつねってほしいってお願いした時断ったじゃないですか」


紗紀は以前、あまりに現実味の無い現状に、ミタマに頬をつねるよう催促さいそくした事を例に挙げた。

ミタマはそんな事もあったな、と振り返りながらも頭を左右に振った。


「こんな可愛い紗紀の頬を抓るだなんて出来る訳が無いよ」

「真顔で何言ってるんですか!もー!……あ!ほら、赤くなってますよ!!」


紗紀が真っ赤になったミタマの額を心配した。


「……ふっ、はは!昔は俺が紗紀にそう注意していたのに。今は逆だね。紗紀のが移ったのかな……」


言葉にする程過去では無いのに。

それはもう遠い昔のようにも感じる。

紗紀は思い出して笑い出した。


「本当に。良く注意されてましたね」

「キミから口付けしようとして頭突きを食らわされた時も大笑いしたよ」

「あぁああ!!それは忘れてください!!」

「嫌だよ」


顔を真っ赤にして慌てる紗紀の腕を取り、顔を隠せないようにする。

本当に意地悪だと紗紀は思う。

思わず目を伏せればミタマが言葉を続けた。


「大切な思い出だからね。紗紀と過ごした日々の事は絶対に忘れない」

「……ミタマ、さん?」


なぜか急に不安に駆られてミタマを見る。

目が合えばミタマは嬉しそうに笑ってみせた。

コツンとひたいと額が触れ合う。

その近しい距離にドキドキと心臓が騒ぎ出す。

気恥ずかしくて逃げ出したいのに、もっと寄り添いたいとも思う。

相反あいはんする気持ちで全身が沸騰ふっとうしてしまいそうだ。


「好きだよ、紗紀」

「……知ってます」

「愛しているよ、とても」

「……っ!」


言葉に困ってギュッと目を閉じる。

心臓がバクバクと今にも破裂してしまいそうだ。

苦しい。

ミタマは紗紀の手を離すとその唇へと触れた。

なぞるように触れて言葉を待つ。

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