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第十四話:ウカノミタマ。
02ウカノミタマ。
しおりを挟む「……白狼が、居ない?」
事の顛末を知らない紗紀は、呆然とマミの言った言葉を繰り返した。
ミタマは立ち上がると紗紀の肩に触れた。
そしてマミを見る。
「ご飯ついでにみんなにも話そう」
ミタマの言葉に二人は驚いた顔をしてミタマを見上げた。
「ミタマさん、ご存知なんですか?」
「ちょっとね」
そうにこりと笑うミタマはどこか怒っているようにも伺えた。
◇◆◇
「それで?ミタマ。アンタはなぜ直ぐに知らせぬのじゃ?」
話を聞いた雪女の雪音が、その場を凍て付かせるような空気をまといミタマを睨みつける。
ガクガクブルブルと何故だか叱られていない化け狸達が怯えていた。
「飛べないのに話し合った所で追いかけようがないでしょ。それに彼には別に主が居る。だからいずれはそちらへ戻るのが必然だとは思っていたよ」
「……紗紀が使役している以上はこちら側だがな」
九重が付け足すようにそう言った。
けれど懐から御札を取り出した紗紀が青ざめたように声を上げる。
「……大変、です。白狼を使役した御札がありません」
みんなが一斉に紗紀を見た。
ふとミタマの脳裏に昨夜の事が過ぎる。
「そうか、だから白狼は紗紀の部屋から出て来たんだね……」
ミタマの言葉に今度はみんながミタマを見た。
どういう事なんじゃワレ!と言わんばかりの表情で雪音がミタマを睨む。
雪音の足元付近は既に凍結状態だ。
氷の柱までいくつか連なっている。
寒さからか、はたまた怖さからか、側に居る化け狸達が自分の体を抱きしめて震え上がっていた。
「……それが、キミ達と話た後に、紗紀の部屋から出てきた白狼と出くわして。戦闘態勢に入ったんだけど逃げられてしまってね」
ここに居るメンバーで唯一空を飛べる白狼を思い出して、あれは勝てないよな。
卑怯だよなとみんながそれぞれに相槌を打つ。
「あの時きっと紗紀から御札を奪ったんだろうね」
とミタマが言いながら、ふと思う。
ここに居る全員が把握していた。
紗紀が御札を懐にしまっている事を。
紗紀の顔が次第に赤くなり机に突っ伏す。
そして直ぐに察した。
あの野郎、寝ている紗紀の懐に手を忍ばせただと!?声にはしないもののそれぞれがそれぞれの反応を示す。
怒る者も居れば青ざめる者も居て、顔を赤らめる者に笑いを堪える者まで。
耐え切れなくなった紗紀が、ガタンと勢いよく立ち上がると駆け出して部屋から飛び出した。
「追うのじゃ!ミタマ!!」
「言われなくとも」
雪音が声を上げる。
しかし言われる前に走り出すミタマ。
残されたメンバーが何とも言えない空気の中、笑いを堪えていた七曲が吹き出した。
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