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第十二話:戦友の死。
12戦友の死。
しおりを挟む「天狗である白狼が動くのは理解出来る。それで、白狼が言っている輩は人間なのだろう?そいつには何の利があるんだ?」
(確かに……)
九重の疑問に紗紀は返す答えを持っていなかった。
「それなら白狼に聞いた方が早いよね!連れてこようよ!」
マミの提案に化け狸一同は頷き合うと、パタパタと部屋を出て行った。
しばらくするとよいしょ、よいしょと掛け声が聞こえて来る。
「おぉおい。丁重に扱えよ!!こっわ!!あぶっ!危ねぇっつの!!」
ゴトンとそのまま転がされて白狼は床に顔をぶつけた。
「それで白狼。アンタが仕えておるニンゲンとやらは何の利があって封印を解く気なのじゃ?」
雪音が満面の笑みで白狼の前へ立つと見下ろす。
「それが人に物を聞く時の態度かコラァ!!」
怒鳴る白狼のほっぺを、気にした素振りもなくマミはツンツンして遊ぶ。二匹は仲良しなんじゃないかなと思う。
「ほら早く答えなよー!な・ん・で・な・の?」
「そんなん春秋に聞けよ。アイツもオマエらに会ってみたいってサ」
面倒くさくなったのか丸投げである。
「春秋?」
聞き慣れない名にその場に居た全員が疑問符を浮かべた。
「俺様が仕えてる?ニンゲンだよ。つーか、俺様達と手を組めばこの戦いは直ぐに終わる。いつまでも誰かが死に続けるなんざおかしな話だろ?」
確かに人間同士が殺し合うなんておかしな話だ。
けれど紗紀の中の不安要素は他にもある。
襟の合わせ目をギュッと握る紗紀に、白狼は優しく笑ってみせた。
「春秋がセイフに打ち勝った暁には、春秋がオマエらの望みを叶えると言っていた。嘘か本当か分かんねぇセイフなんかより信用出来るぜ?」
「貴様が既に信用ならんのにか?」
グサリと言葉の暴力を振るう九重。
ごもっともである。
それに対して誰しもがうんうんと頷いて見せた。
「と、に、か、く!!いっぺん会ってから考えてくれよ!なぁ?そうだろ?会ってもないのに決めつけって良くねぇと思わないか?」
なぁなぁ、おいおい、と必死である。それもそうだと思い始める紗紀。
知ってからでも遅くは無いのではないかとそう思う。
けれど白狼に対して不信感しか無いミタマは厳しい眼差しで彼を見ていた。
「詰まる話、お前と約束をした以上、その春秋と言う輩はあの大天狗の封印を解く気なのだろう?」
「そりゃあそうだろ」
「ならば政府よりも信頼出来るに値したにしろ神使含める神々は納得しないよ」
ミタマの言葉を聞いてハッとする。
(そうだった)
ミタマも神々も封印を守っている。
例え政府が悪だとしても白狼達との対立は避けて通れないだろう。
「……ふーん?交渉決裂ってワケだ?んま、いいぜ。俺様は別にどーでも。使い捨てにされねぇといいなぁ。ご主人サマ?」
「よし、白狼撤去!!」
ニヤリと意地悪げに笑う白狼を遮るように、ムジナが声を上げる。
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