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第十二話:戦友の死。

10戦友の死。

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「……うん。ごめん。もう済んだ内容だし今更怖がらせる事ないかと思って……」


そんな事、政府の契約書には記載されていなかった。

戦闘以前に体に合わなければ死ぬ恐れすらあっただなんて、信じられない。

モヤモヤとした感情が渦を巻く。


「何度も言うが、コレでもアイツら信用して従うのか?」


どれが異常でどれが正常なのだろうか。

彼の常日頃の言動のせいか、白狼の言葉を測りかねいていた。


「……怪物……あの黒い怪物が出る前にも死人が出てます!それは?妖怪側が殺したんじゃないの?」

「殺しちゃいねーよ。初期のヤツなら政府側で見かけたな。制服姿の女」


白狼の言葉にセーラー服の女の子の姿が思い出される。


(確かあの子が亡くなって、優一さんが代わり来たんだ……)


「政府側で見かけたってどういう事?」

「狛犬あてがえられた後、それぞれ異世界に移動しただろ?」


白狼の問に頷く。


「その後、割と早い段階でその嬢ちゃんが戻って来てさ。アレ、たぶん妖力が体に合わなかったんだろうな。セイフってのと話しててさ。どっか連れてかれたんだよなァ。然程興味もわかねぇし?追いかけてねーからそんくらいしか話せねぇケド」


(妖怪に殺されたんじゃなかったんだ……)


招集をかけられた日、政府の男の人は確かに殺されたと言っていた。


(どういう事なんだろう?)


白狼の話と、自分が見聞きした話にズレがあって混乱する。

頭が上手く回らず黙り込む紗紀。

沈黙を破ったのはミタマだった。


「こちら側が政府側を信頼したのは、あの安倍晴明の生まれ変わりだとウカノミタマ様が感じ取ったからだよ。ただ神を見る事が出来る相手ってだけならこんな大きい事に神使が携わるとは思わない」

「安倍晴明の生まれ変わり……?」


紗紀と白狼の声が重なった。

ここ最近になって良く耳にするようになった“安倍晴明”。

それはウカノミタマ様の元神使、くずの葉と人間の子ども。


「はぁ?ふざけんな!あの政府がか!?」


白狼が噛み付くように声を上げる。


「ウカノミタマ様が見紛うと?」


ウカノミタマ様尊敬スイッチの入ったミタマが、白狼をにらみつける。


「紗紀ちゃん、少し休んだ方がいいかも。一気に情報量詰め込むと判断が鈍るよ」


情報過多でプスプスと煙の上がりそうな紗紀の肩に、七曲は触れた。

七曲には政府云々の話は微塵も分からない。

だからこそ、客観的に一旦リセットするべきだと判断が出来た。

どちらにも感情移入していないが為に冷静でいられたのだろう。


「あ!居た!みんなご飯の準備出来たよー?」


そこに現れたのは化け狸のマミだ。

みんなが集まっている事にきょとんと小首をかしげて、不思議そうにみんなを見渡す。


「……何かあったの?また白狼なんかした?」

「ようようおチビちゃん。この紐ほどいてくれよ~」

「やーだよ!べ~だ。アンタがナナちゃんに酷いことしたの知ってるんだからね!」


白狼がわざとらしくマミにからめば、マミはあっかんべーをして七曲の後ろに隠れた。

その光景がなんだか微笑ほほえましくて口元がゆるむ。


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