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第十二話:戦友の死。
08戦友の死。
しおりを挟む「俺らはそんなニンゲンに制裁を与えたい。悪だと思うニンゲンのみが攻撃対象だ。オマエも考えた事ねぇーか?この世の不条理を。悪いヤツラばっか得をして、真面目に生きてるヤツは損をする。親だって自分で選んだわけじゃねーのにさ?セイフですら捨て駒扱い。おかしな世の中だよなァ。そう思わねぇ?」
それはどうしてこうも、弱い心に漬け込むのだろう。
甘美な誘惑。
紗紀は思わずその場に座り込んでしまった。
「紗紀!?」
慌ててミタマも一緒にしゃがみ込み紗紀の震えるその背を擦る。
「私は、誰かを攻撃してほしいわけでも、殺してほしいわけでもないよ」
「生かしとく価値はあるって?平気な顔して戦場に送り込むヤツラを?」
「でもそれは……同意の上で、拒否権だってあって……」
「自己責任だって?ハッ!笑わせる。ぶっちゃけオマエより、死んだほうがこの世の為になりそうなヤツわんさか居るぜ?オマエらだって現し世知ってんなら分かるだろ?この女の扱い見てみろよ。酷いモンだろ?」
白狼は声高々にそう言ってミタマと七曲に視線を向ける。
「キミの言いたい事は理解したよ。それで、キミの上についてる人間ってのは、誰なんだい?」
ミタマが話を進めようと問いかけた。
「つーか、名前を言ってオマエらピンとくんの?」
ごもっとも過ぎてみんなが押し黙る。
知り合いならまだしも、知らない人の名前を挙げられた所で知らないものは知らないのだ。
「ンまぁ、会わせてやってもいいぜ?アイツもオマエらに興味持ってたし。心配もしてたからな」
「心配……?殺したのに?」
白狼の発言に納得がいかなくて、お腹の底がモヤモヤとする。
「はぁ?」
「悪だと思う人間が対象だと言うなら、今まであなた達が寄越した妖怪に殺された人は!?悪だったから殺したの!?」
「待て待て。死人?なんの事だ?」
紗紀がまくし立てるように言葉を吐けば、白狼は意味が理解出来ないと首を捻る。
「とぼけないで!実際何人もこっちは亡くなってるんだから!」
「それは、あの黒い怪物が殺したんじゃなくて?妖怪が、か?」
「どっちも同じじゃない!」
ずっと燻っていた苛立ちを吐き出すように、声が大きくなっていく。
けれど、白狼は怒る紗紀には対して目もくれず、紗紀の言葉が気になっていた。
「いや、同じじゃねぇーよ。あの黒い怪物はこっち側じゃねーし」
「え、そうなの!?」
白狼の予想外な返答に、七曲が驚きの声を上げた。
紗紀もミタマも驚愕して白狼を見る。
「だってあなた、七曲さんを怪物にしたじゃない」
「バーカ。あの薬はセイフの研究室から持ち出したモノ。つまりはあの怪物はセイフ達が生み出してる。俺はそれを目の前でオマエらに証明してやりたかっただーけ。だって目の前で見なきゃ俺様がどんなに言っても聞きゃしねーだろ?」
「じゃあ、あれが……白狼が見せるって言ってた証拠?」
紗紀の問いかけに、白狼はニタリと笑った。
それは肯定なのだろう。
白狼の言葉には一理ある。
なんせここに居る誰もが白狼を信用していないのだから。
白狼の言葉が飲み込めず、三人は押し黙る。
(政府が、七曲さんを怪物にしようとした元凶の薬を作ってる……?)
「それなら、最近増えた異常な怪物の数々は……?」
「俺らは関与してねぇよ。むしろだからこそ怒ってる」
「……」
白狼が嘘を付いているようには微塵も思えない。
(それはつまり、つまる話……本当の黒幕って。政府?)
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